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*以下の山名・地名考は、「比叡山系を歩く」(2003年)より抜粋して掲載しています。
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ran04_5_4t おうさかやま(手向山・相庭山・相場山)      324.7m

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長等公園への尾根道
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*長等公園につづく尾根道
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 近江と山城を結ぶ重要な東海道(大関越)と、四ノ宮から北国街道(北国海道・西近江路)へ連絡する小関越が南北を通過し、この山も大きな役割を担ってきた。その典型的な例は米相場にかかわるもので、明治時代の『近江國滋賀郡誌』では「昔時米商この峰に登り、小旗をもって米価の高低を報ず」と紹介している。
 旗を使って通信手段とする方法は、古来より行なわれた狼煙台と同様の仕組みであったといえる。大阪堂島の米相場を伝達するために、見通しのよい山頂であらかじめ取り決められた方法によって大きな旗を立て、その日の相場を山から山へ伝えていくのである。江戸時代の大坂には、諸藩や幕府の年貢米(蔵米)が集まり、蔵屋敷が立ち並んでいたという。その中心地で、1871(明治4)年に堂島米会所が開かれると、旗振り通信が始められ、電話が普及する大正時代まで行なわれていた。
 大阪から京都・滋賀へのルートは次のとおりである。
 大阪堂島→吹田・千里山→茨木・阿武山→京都・柳谷→京都・二石山(二谷山)→大津・相場山(小関山)→栗東・安養寺山→野洲・田中山(相場振山)→安土・十三仏山→彦根・荒神山→彦根・佐和山。
 また、山頂から南へのびる尾根の標高300m地点に、「菱形基線測点」があり、国土地理院が設置した京都菱形基線場の役割も最近まで果たしてきた。
 経度・緯度の位置が求められる三角点や、水準測量によって精密な高さを測定する水準点は馴じみ深いが、この菱形基線測点は全国に47点〔1993(平成5)年現在の数、1971(昭和46)年以降に設置〕しかなく、目にする機会は少ない。これは、菱形の頂点4点を結んだ基線を観測する測量で、三鷹の東京天文台構内に設置されていた菱形基線が、関東大震災のさい地殻の変動を明らかにしたことで知られる。本来は地殻変動調査を目的として設けられたもので、東西・南北方向の伸び縮みや面積変化など、少ない観測数でも有効に求められる特徴がある。菱形の大きさは場所によって違うが、一辺は10〜20km。長距離型光波測距儀を使って観測を行なう。また、逆に長距離型光波測距儀の検定にも使われていた。現在は、測量にGPS(Global Positioning System=汎地球測位システム)が使われるようになり、全国に展開された電子基準点(1200点)にその任務を譲った。なお、京都菱形基線場は、大文字山(29、京都市左京区鹿ヶ谷大黒谷町)・追分(30、大津市追分町)・花山天文台(31、京都市山科区花山)・浄水場(32、京都市山科区勧修寺丸山町)の4点を結ぶものである。

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