てっぺんの山という意味であろうか。あるいは、山の頂ということであろうか。一乗寺(京都市左京区)にあった山城に関連した山名という印象を受けるが、確かなことは不明だ。
「てんこ」を『広辞苑』(第四版 新村出編 1991年)で調べてみると、「天こ」として「(西日本などで)頂上。てっぺん。てんこつ。てっこ」と解説してあり、とくに飯をうずたかく盛る意として「てんこ盛り」を例として示している。確かに、「てんこもり」という言葉は子供の頃よく使った記憶があり、今は「山盛り」の方が頻度が高いように思う。また、「天鼓」であれば、「天のつづみ」として仏教用語の「天鼓」、さらに「雷鳴、かみなり」の意も載せている。
三角点の点標名は掛橋だが、これはこの山の北東側にある字名である。字には、このほか西側の坂端や南側の城があって、まさにてっぺんにある城山を想わせる。付近には、天ヶ丸・厩ヶ谷・馬坂・堀切といった地名もあり、時代的な背景は判らないものの、一乗寺東側の山なみには中世の山城が連なっていたのではないだろうか。
江戸時代の『近畿歴覧記』の東北歴覧之記には、「修学院の南に曼殊院あり、一乗寺村に至る。これより叡山無動寺へ直に越える道あり(中略)この艮の山上に渡辺代々の城跡あり、織田信長公のために滅亡」させられたと明記している。 |