古代に出雲系の人々が移り住んだと伝わる出雲(桜井市)は、有名な大神(おおみわ)神社・長谷(はせ)寺・談山(たんざん)神社などの陰に隠れた知られざる地域である。数年前に巻向(まきむく)山と初瀬(はせ)山をつないで歩いたときから、山麓も含めて訪ねたいと思っていた(「巻向山から初瀬山へ」)。 日曜日のトレッキングに要望が寄せられたので、山と山麓の周回を計画する。入山は「大和朝倉」駅から大和(初瀬)川を渡って慈恩寺の集落に入り、奥不動寺の参道で山上に向かう。ダンノダイラ(段ノ平)に寄ってから、白山(しろやま)を経て巻向山へ。下山は、高山(こうぜん)神社から白河(しらが)川に沿って出雲へ出る予定である(「桜井」駅まではバス)。 落ち着いた慈恩寺の初瀬街道(伊勢本街道)を東に進み、いったん国道に出てから黒崎の墓地がある尾根を登る。下部は落ち葉が積もる石畳で、辺りの雑木林もよい雰囲気だ。西の三輪山につづく尾根まで、掘り込まれた明瞭な道と落葉で不明瞭になった区間が交互に現れる。 巻向山南面の標高450m付近に広がるダンノダイラには、天壇や湧水・小川の説明板が立ち、東端に磐座(十二柱神社)があると記されていた。尾根を見上げると、いくつもの岩が散見できて祭壇を設けてある。この地は明治時代初めまで人の暮らしがあったとされ、隠れ里と呼ぶに相応しい陽当たりのよい場所である。 迎春の準備が進む奥不動寺へ降り、白山から山頂へ進む。登頂後は北へ向かって、リョウサン池の畔に建つ高山神社を参拝。小滝を懸ける白河川に沿って白河へ降る。一面に広がる棚田は霧に覆われているため、幻想的な光景が印象に残る。斜面に点在する家屋を見ながら、西側の山際にある秉田(ひきたの)神社へ向かった。式内社の境内は静けさに包まれる。古くは、西の谷を隔てた丘の上に鎮座していたらしい(古宮址)。 初瀬街道(伊勢本街道)近くまで降りると、一際高い木が十二柱(じゅうにはしら)神社の所在を教えてくれた。国常立神(くにとこたちのかみ)など神世七代(かみよななよ)と、天照大神など地神五代(ちじんごだい)の神が祀られる。當麻蹴速(たいまのけはや)と対戦して勝った野見宿禰(のみのすくね)の五輪塔で知られる神社だ。元は狛川の塔ノ本にあって、ここへ移設された。狛犬の台座は4人の力士が支えている。 この地で作られる出雲人形は、「長谷詣」の土産物として人気を博してきた。野見宿禰が創始者といわれる埴輪を彷彿とさせる。殉死の歴史を改めた力は大きい。また、「泊瀬列城宮(はつせのなみきのみや)跡」(第25代武烈天皇)の伝承地でもある。 西側にある地蔵寺へ行くと、石仏群の前にダンノダイラへつづくルートの標識があった。終日の雨だったが、「記紀」の世界を探訪する行程は興味深い一日になった(2025.12.21)。 |