三輪山は、大神(おおみわ)神社の神体なので登拝は別の機会にしたい。ただ、それにつづく山と里にも見どころが数多くあり、歴史的なテーマで歩くとおもしろい。今回は巻向(まきむく)山と初瀬(はせ)山を目的地として、コース付近の史跡に寄りながら「大和朝倉」駅から「長谷寺」駅まで歩いた。 駅前から大和(初瀬)川に架かるヤンゲン橋を渡って慈恩寺の集落に入る。途端に落ち着いた町並みとなり、初瀬街道を東に進む。この道は伊勢街道のひとつでもあり美しい風景だ。黒崎から奥不動寺への山道を登る。石畳に落ち葉が積もってこの季節らしさが漂う。尾根に達すると、三輪山への道は進入しないよう注意標識が立っていた。まず、寺院の本堂脇からダンノダイラへ向かう。 そこには明治の初めまで人の暮らしがあり、山上の湧水から小さな流れがあったことを説明する掲示板が立っていた。それによると、485mの等高線上に湧水池(「りょうさんいけ」)と水神坐水沼(みずかみいますみずぬま)社があって、高さ15mの岩崖が見られるという。興味深い内容で、あらためて探索したいと思わせる。また、注連縄が巻かれた磐座もあった。いずれにせよ、山麓にある出雲・白河(しらが)の元になった土地であろう。古代から中世の土器片などが出土しているらしい。 再び寺院へ戻り、白山(しろやま)へ登る。こちらは明るく開けた岩とザレに松が生える空間である。谷を挟んだ対岸にダンノダイラ上部の岩が見える。そのまま尾根通しに巻向山へ向かった。天武天皇が行幸されたという白河迹驚淵(とどろきのふち)と高山(こうぜん)神社に寄り、白河川に沿って初瀬山をめざす。旧2.5万図では神社と池の位置が間違っており、地形の把握は難しかった。新版は訂正されているのでわかりやすい。周辺は林業用の作業道が発達しているため、うまく繋いで山頂に着いた。 あとは長谷(はせ)寺の裏山まで尾根伝いに進む。明瞭な道がいくつも分かれるので、方向を見極めながら初瀬の共同墓地を経て門前に降り立った。時間が早かったのでここで解散し、参拝する方や店を覗きながら駅に向かう方などに分かれた。大和の里山歩きはなかなか楽しい(2020.12.11)。 |