大塔山系の嶽(だけ)山は急峻で、各所に岩場が点在する。2022年に百間山から半作嶺(はんさみね)へ縦走した折に、ぜひ登りたいと思った山である。古い案内書に「ローソクが突き立ったような岩」と記された岩場の写真が載っていて、記憶に刻まれたピークでもあった。 コースは、和田口から和田川に沿って西尾根の取付地点に向かい尾根を直登。柿平(上ノ平)へ下る尾根を集落に下山するのが一般的である。この山域の精通者たちは、北ノ川を取り囲む稜線や山神宮(山ノ神)へ下る尾根の記録を残している。 行動は和田川の徒渉から始まった。左岸にある廃屋から、植林の尾根に取り付いて急な斜面を登ると、露岩が目立ってくる。ところどころにフィックスロープがあるものの、なかには古く心細いものが見られるので注意が必要だ。 標高500mぐらいに達すると、対岸の山稜が見える場所も出てきた。小ピークをやり過ごし、再び急登になると上部に大きな岩を感じる。「直登は危険」「巻道を登ること」の標識を確認し、尾根の北面を巻き気味に登る。尾根へ戻った地点から少し降ると、写真で見た岩塔が目の前にあった。慎重に岩場(烏帽子岩)まで行って眺望を楽しむ。 馬ノ背の岩稜はフリクションが効いて気持ちよく、中辺路が通る山稜や果無山脈を見渡した。自然林の中を登るとほどなく山頂に達する。 直下のテレビ受信設備跡から埋設ケーブルの尾根を降る。途中で方向が変わるため頻繁に確認しながら進む。標高450mぐらいから作業道が何本も左右に分かれるものの、確実を期すため尾根を忠実に降った。家屋が見えた時点で右に道を取り、獣害防止ネットを開閉して道路に出た。西尾根に比べ歩きやすいので、下山ルートとして相応しい。 3時間ほどで終えられたため、予定していた安川渓谷まで往復する。東へ進むと、北ノ川合流地点の先に山神宮(山ノ神)が祀ってある。二股になって聳える木が特徴的だ。安川に沿って曲折する林道(安川大塔川線)を又井川出合まで歩き、トンネルの手前からトレッキングコース(約1.7キロ)を周回する。雨乞ノ滝やブルーに輝く安川を満喫した(2025.3.7)。 |