ここ何回か中辺路を歩いて、大塔山系が気になっていた。これまでに登ったのは、安川流域からゴンニャク山・野竹法師(のたけほうし)と大塔山・法師山だけである。そこで、半作嶺(はんさみね)と百間(ひゃっけん)山を日帰りで行けないかと考えてみた。「紀伊田辺」駅近くに宿泊すると、百間口(「百間山渓谷」の駐車場)から山越えで富里温泉(富里連絡所前)まで歩けそうだ。ならば、交通に問題はないので天気が安定する日を選んで実施する。 下鮎川から熊野(いや)の百間谷入口まで距離は25キロメートル。午前9時過ぎに出発地点から歩き始める。よく知られる「百間山渓谷」は道が整備され、谷筋を渡り返しながら遡る。滝や淵には名前が付され、水量の多い時期はさぞ見事な景観が見られるだろう。今は渇水期なので迫力に欠けるが、水はどこまでも透明で樹林も美しい。岩に囲まれた犬落の滝は大きく高まく。百間滝は、時間の関係と沢登りの準備をしていないので寄らなかった。上流の白い川筋が印象に残る。 千体仏を確認するため、谷を離れて往復した。そのあと、急峻な尾根を百間山めざして登る。999.4mの頂上(三等三角点)では、灌木に阻まれ展望がよくない。三ツ森山へつづく稜線はところどころで岩が露出し、両側がスパッと切れ落ちていたり細い道がつづく。樹間から果無山脈や大峰の山々が姿を見せるところもあった。岩峰の三ツ森山はこの日一番のすばらしい眺望だ(→「三ツ森山の眺望」)。 845.1mの四等三角点から、二体の石仏が祀られた半作峠へ植林地を降った。「乙女の寝顔」と形容される半作嶺はいくつもピークが連なる。登り降りを繰り返し、午後2時前に登頂した。山頂手前の大岩で来た道を振り返ることができ、連続するアップダウンを実感する。 峠道から林道に出て、大垣内(おおがいと)を経て日置(ひき)川を渡ると富里温泉である。今日の行程は16キロメートル。下山した道路では、流痕がわかる名水「乙女のしずく」とタブノキの巨樹が印象に残った(2022.2.28)。 |