串本町にある重畳(かさね)山は、海上の船が目印にした山である。また、古座に入った熊野古道大辺路が、伊串(いくし)から古田へこの山を越えた。山上に弘法大師の開基で知られる神王(しんのう)寺があり、四国八十八ヶ所霊場巡りの石像が安置してある。境内には重山(かさねやま)神社(元=重畳山神社)が祀られ、熊野三山とも関係が深い。 「古座」駅を出発し、林道神野川(このがわ)線で寺院をめざす。山麓の地主神社にはクスノキが2本あり、大きい方は幹周が8mを超えると表示してあった(推定樹齢=700年以上)。和歌山県内では第三位の巨樹らしい。 標識にしたがって小笠(260m)の山腹を回り込むと、「串本町民の森」(公園)の駐車場に着いた。右手の高台に展望ポイントがあり、第一番霊山寺の石像が四国に向けて佇んでいる。順道で参道を進むと、納骨堂と稲荷社を経て神王寺と重山神社が現れ、展望広場手前まで石像が並ぶ。折り返して尾根を登ると、重畳山(本笠)の頂上(二等三角点。点名=重山)に達した。木々に囲まれ眺望は得られない。 公園の駐車場まで参道を戻り、東端から小笠の西面をトラバースする。尾根に出たところから東屋が建つピークを往復した。途中で展望に恵まれる区間があって、古座川流域や大塔山系の山々を眺める。 古道は山肌から谷筋に下っていくが、少女峰(十七夜岳)に立ち寄るため尾根を外さないよう進む。古座川の右岸へ張り出した支尾根に入り、露岩の上に立った。眼下には牡丹岩付近が手の届くような近さにあって、以前に登った峯ノ山・嶽ノ森山の特徴ある山容を望むことができた。さらに、下部の送電線鉄塔近くの露岩にも寄って、今度は少女峰(十七夜岳)を仰ぎ見る。 尾根を降りて古田の集落に入り、古座川右岸を駅に帰る。家屋が建ち並ぶ道路際に、小山井戸(史跡)が残されていた(2025.1.30)。 |