清流で知られる古座川をぜひ訪ねたかった。ちょうど中流に特異な岩峰の嶽ノ森山があり、山系の代表的な峯ノ山とつなげばおもしろい半日コースになる。 河畔にはマグマが固まってできた一枚岩(流紋岩質火砕岩)があって、ジオパークを象徴する景観(熊野カルデラ南縁に沿う弧状の火成岩脈)を確認したいとも思っていた。蛇行を繰り返す川筋には岩壁や岩峰が次々と現れ、その展開に目を休めるいとまがない。 一枚岩の対岸にある道の駅から上流に向かい、一枚岩トンネル近くの登山口から取り付く。やがて犬鳴谷のナメトコが現れ、雪と氷のスラブはゴム底のシューズでは歯が立たない。沢登りよろしく、水流に足を入れてフリクションをきかせて登る。今朝は気温が低く、日光のあたらない谷筋では午前中に解けて乾くことはないだろう。荒縄を用意して来ればよかった。頂上への岩場を登ると大塔山系から那智山が白く輝いている。視線を南にずらすと太平洋が光っていた。すばらしい展望に釘づけとなる。 今回は山の難しさを痛感する3日間になった。前日(烏帽子山)は積雪の山だったが、下山後にマダニが皮膚を這っていたし、今日は麓の道路が凍てついて車は低速の走行を強いられる。そんな両極端な状況が同居している南紀の冬である。 峯ノ山への尾根は穏やかで、植林と伐採のエリアが交互につづく。林道から山頂の電波塔めざしてシダ漕ぎで直登し、昨日に次ぐ一等三角点を踏む。 保守点検用の作業道を降り、水呑大師に寄り道して峯へ下山した。集落の入口に薬師堂があり、近くにはビジター用のトイレまで設置してある。立合へ出て一枚岩の道の駅に戻った。本流沿いには、江戸時代の朱子学者=斎藤抽堂(さいとう せつどう)の名づけた中国風の山や岩が点在し、嶽ノ森山は「滴翠峰」と称すようだ(2023.1.28)。 |