2006年に『大峯奥駈道七十五靡』(森沢義信 ナカニシヤ出版)の仕事に携わって興味を覚え、それ以降は時間があるときに靡(なびき=行所・霊地)を訪ねて場所を確認してきた。写真や記憶がないところもあるので、順峰(じゅんぶ・じゅんぷ)の結願所、逆峰(ぎゃくぶ)では最初の行所にあたる柳ノ宿(やなぎのしゅく=第七十五靡)から金峯(きんぷ)神社までを歩こうと出かける。 奈良方面から壺坂峠や車坂峠を越えると吉野川の辺りに出る。大淀町北六田(きたむだ)から六田ノ渡(柳ノ渡)で川を渡り、吉野町六田に入るのがルートであった。今は美吉野橋が架かり、かつての常夜燈や役行者像が迎えてくれる。集落の上部に初花権現社(前花神社)があり、金峯山寺に運ばれる蓮華を供える「蓮華入峰」が行なわれるらしい。一ノ坂を少し登ると柳ノ宿(一ノ坂行者堂)である。現在は、その上部の道路際に再建されている。 江戸時代には町石のある桜並木だったようだが、尾根筋の道は荒れている。明治時代に創建された吉野神宮一帯が第七十四靡の丈六(じょうろく)山らしい。峰ノ薬師堂から南朝方の村上義光(よしてる)の墓を経て下千本駐車場まで登ると門前町に入る。黒門をくぐって銅(かね)ノ鳥居から金峯山寺蔵王堂にかけては人の姿が多い(第七十三靡=吉野山)。仁王門は覆いに囲まれ工事中だった。 韋駄天山や吉水神社・東南院・勝手神社(工事中)などに立ち寄りながら、急坂を登ると櫻本坊の門前に着く。付近には修験寺院が並ぶ。上千本に入り花矢倉まで来ると、背後の門前町を眼下に金剛山・葛城山がスカイラインを描いていた。途中の四等三角点(火之見櫓)や横川覚範(よかわのかくはん)の首塚も見る。 第七十二靡の吉野水分(みくまり)神社(子守神社)から高城(たかぎ)山の展望台に回り込み、奥千本口の鳥居をくぐって坂道を頑張ると金峯神社(第七十一靡)である。東側にある義経隱塔(蹶抜塔=けぬけのとう)の下からは、龍門ヶ岳・烏ノ塒屋(からすのとや)山が印象的で、梢の間にはピラミダルな高見山も姿を見せていた。社前からは大峯山への道が南に延びる(2024.11.3)。 |