秋田の焼山は那須火山帯に属する活発な火山で、かつては山上(湯沼・中ノ沢・叫沢)で硫黄を採掘していた。現在はコースによって立ち入りが禁止されている。1887(明治20)年以降だけでも水蒸気噴火が9回観測された。近年は中央火口丘である鬼ヶ城周辺の活動が活発だ。1997(平成9)年には山体崩壊(5月11日)と泥流が発生(8月16日)している。また、1986(昭和61)年には叫沢で火山ガスによる死亡者も出た。 後生掛(ごしょうがけ)温泉は、オナメ(妾)・モトメ(妻)の来世での幸福を願う(後生を掛けて)伝説に由来する。温泉の下流から澄川を渡ってブナ林を登るが、火山の荒々しい景観はまったく見られない。国見台のトラバース道になると草紅葉が目立ってきた。山中にある澄川地熱発電所の煙と北側の山々が幾重にも重なる。遠くの台地状の連山は八甲田山で、櫛ヶ峯や大岳のピークも確認できた。栂森までくると焼山と鬼ヶ城が前方に横たわり、手前の山腹には焼山山荘(避難小屋)が建っている。 小屋で休憩し、岩場を越えると火口湖が眼下に姿を見せた。なかでも乳白色の湯沼が幻想的で、ガスがなければダイナミックな風景を見せてくれるに違いない。名残峠も眺望はまったく得られず、そのまま頂上まで進む。 下山をはじめるとガスが吹き払われ、叫沢の荒々しい岩肌が剥き出しになった。大地の息吹を感じつつ尾根を降る。下流に噴煙が一筋立ち昇り、周辺の広大なブナ林は日光が射し込んで明るい。 徐々に傾斜が緩くなり、最後の急斜面を階段で降ると噴気が立ち込める玉川温泉の一角に着いた。白濁した流れを渡って自然研究路に入る。ひとつの源泉から湧出する湯量は日本一といわれ、全国的にも有名な強酸性の温泉だ。ラジウム線を出す北投石(天然記念物・特別文化財)が病気療養に効果があるらしく、地熱を利用する岩盤浴の人の姿が多く見られた(2024.10.6)。 |