若狭湾へ突き出た内外海(うちとみ)半島の久須夜(くすや)ヶ岳は、標高が600mを超える存在感のある山だ。自動車道(エンゼルライン)が山頂の展望台まで通じていて、歩いて登るという発想がこれまでなかった。ただ、海際のピークだけに景観が優れているのは想像でき、名勝に指定された海岸の断崖絶壁(若狭蘇洞門=わかさそとも)も同時に楽しめそうである。 江戸時代から知られる景勝地を歩いて訪れるため、今回は山頂を出発して海辺まで降り、再び山頂へ戻るという逆パターンの登山になる。 展望台では若狭湾全体が望め、東の越前海岸から西の高浜湾まで複数の半島が視野に入った。気温と湿度が高く、遠くの山は眺められなかったものの、敦賀半島から野坂山地・若丹国境尾根の山々を一望することができた。これまでに登った山々を眺めて話しに花が咲く。晴天にも恵まれ幸いだ。 松ヶ崎への尾根を降って泊乗越に向かい、急峻な斜面をトラバースして蘇洞門の中心にある大門(おおもん)・小門(こもん)をめざす。上部はコナラなどの落葉広葉樹も見られたが、大半は照葉樹林である。林床にはエビネもあった。優れた風景として海外で紹介されたことがあるらしく、イギリスからの人と出会う。入口にあった自転車は彼らのものらしい。また、若狭の山と谷の著作がある草川啓三さんにも偶然出会って驚いた。 支尾根を慎重に降ると段差の大きい階段が現れ、眼下に海食作用による岩場がつづいていた。吹雪ノ滝が天井から落下し、その前に不動明王像が安置してある。桟橋が設置された大門・小門の前まで行くと船が近づいてくる。ほどなく接岸し、10分ほど船客が上陸したのち出航した。その後は、人影のない静かな海岸でゆっくり休憩する。 昼食後に、頂上まで登り返して一等三角点を踏んだ。この日は陸地側の蘇洞門を存分に楽しんだが、次回はぜひ遊覧船でこの名勝全域を訪れてみよう(2024.9.13)。 |