探山訪谷[Tanzan Report]
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 No.977【蝙蝠岳】
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大井川西俣の向こうに横たわる蝙蝠岳(2024.8.21)
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左=鳥倉登山口付近の樹林  右=豊口山の尾根にある「宮」(宮内省)の境界標石
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三伏峠から望む塩見岳(2024.8.21)
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左=塩見岳西峰の鎖場  右=塩見岳東峰
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左=北俣岳の稜線  右=2,758m標高点西側の薙(なぎ)
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左=二重山稜の船窪地形  右=南側から2,758m標高点を見上げる
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左=蝙蝠岳近くの稜線  右=蝙蝠岳(三等三角点、点名=中俣)
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蝙蝠尾根から望む北俣岳(左=2,920m)
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左=切れ落ちる塩見岳北面  右=ガスが薄くなり、西峰と東峰が姿を現す
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塩見岳〔西峰の御料局三角點から、頂上の二等三角点(点名=塩見山)・東峰(右)を望む〕
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ライチョウ(天狗岩の南斜面で)
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塩見小屋の朝(左から北岳・間ノ岳・西農鳥岳・農鳥岳・広河内岳。前は新蛇抜山・北荒川岳の稜線 2024.8.21)
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塩見岳西峰(左手)と手前右側に天狗岩が大きい(2024.8.21)
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 蝙蝠(こうもり)岳は、南アルプス中部に位置する塩見岳の南東側にある。訪れるのがなかなか困難な一峰で、体力のあるうちに出かけようと思っていた。ただ、山麓の二軒小屋ロッヂが今年も営業しておらず、行動には宿泊・炊飯の道具を持参する必要がある。そのため、蝙蝠尾根のトレースにこだわると時間とともに難しくなるので、ピークの登頂を優先してコースを考えることにした。
 1日目(8.19)は鳥倉(とりくら)登山口から三伏(さんぷく)峠に入り、2日目(8.20)に塩見岳を越えて北俣岳から蝙蝠岳を往復。塩見小屋に泊まって、3日目(8.21)は往路を下山する計画にする。時間があるので、烏帽子岳にも立ち寄るつもりだ。
 お盆明けの静かな時期を選んで段取りしたが、湿った空気の影響で不安定な気象状況がつづく。山行中は毎日夕立に見舞われ、1日目の夜から翌朝にかけては断続的に雨が降った。2日目は霧雨の一日になり、期待した眺望はお預けになる。3日目の朝は青空が戻り、湧き上がる雲に隠れる時間があったものの、午前中は美しい景観を堪能した。
 塩見岳は、大鹿(おおしか)村の塩川や鹿塩など塩の産地に由来するとする説や太平洋が見える(潮見)とされ、暮らしに大切な塩が要素となっている。建御名方命(たけみなかたのみこと)や弘法大師の塩泉伝説が残る。以前は、塩川土場(しおかわどば)から日本で最も高い峠とされる三伏峠に登ったが、鳥倉林道ができて標高1,800m近くまで車でアプローチできるようになった。周囲はカラマツの植林で、林床にマルバダケブキの黄色い花が目立つ。豊口山の尾根に出ると宮内省の境界標石が立っていた。尾根の北側斜面をトラバースしながら高度を上げて峠へ向かう。
 三伏山と本谷山(三等三角点、点名=黒川)の樹林帯を抜けると、ガスに覆われた塩見小屋が現れた。ハイマツ帯を進んで天狗岩の南斜面をトラバースする。目の前は西峰の鎖場だが、ほとんど見通しがきかない。最高地点の東峰から細い稜線を慎重に降り、北俣岳の分岐から大井川上流の東俣・西俣を分ける蝙蝠尾根へ方向を変える。2,920mの最高点を過ぎると広くてなだらかな稜線に変わり、どんどん行動がはかどる。2,758m標高点の先は二重山稜になって、ナナカマドやダケカンバが茂っていた。最低鞍部から登り始めると、幾つもある隠れピークの先に蝙蝠岳の頂上があった。
 白峰南嶺から望めば、羽を広げたコウモリの姿に似ているのが山名の由来だとされる。かつて山頂近くまで伐採され、東俣から作業用の道が張り巡らされていたらしい。したがって、標高2,600m前後までほとんど二次林である。ガスで方向に注意しなければならないものの、往路とほぼ同じ時間で北俣岳へ戻る。塩見岳に登り返し、慎重に岩場を降ると一瞬だがピークが姿を現した。ジャンダルム(天狗岩)のトラバースで4羽のライチョウと出会う。
 塩見小屋で日の出を迎え、権右衛門山の南面をトラバースする。この付近はあちこちトレースしたことがあり、本谷山〜黒河山や二児山など前衛の山を含め三峰(みぶ)川流域の風光が懐かしく思い出される。最後に三伏峠のお花畑から烏帽子岳へ登って、360度のパノラマを楽しんだ。先月に登った悪沢岳が近い(2024.8.19〜8.21)。
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仙丈岳(左)と甲斐駒ヶ岳(右=塩見小屋から 2024.8.21)
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荒川三山(遠景左手)と雲に覆われる小河内岳(中景中央)。最遠景右は奥茶臼山(2024.8.21)
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恵那山(遠景中央 2024.8.21)
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中央アルプス(左から安平路山と南駒ヶ岳・空木岳・三沢岳・木曾駒ヶ岳・将棊頭山など 2024.8.21)
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遠景は北アルプスの山々(中景左手は二児山。背後の右側に戸倉山 2024.8.21)
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遠景左から穂高連峰・槍ヶ岳・常念岳・餓鬼岳・鹿島槍ヶ岳など(2024.8.21)
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南アルプス北部の山々(遠景左の仙丈岳から遠景右の広河内岳まで。中景右手は北荒川岳 2024.8.21)
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烏帽子岳(中景中央左)と三伏山(前景右)。遠景左手は悪沢岳(本谷山の尾根から 2024.8.21)
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のぞき岩から伊那山脈方面(遠景左は前茶臼山。背後の中央左に鬼面山。前を横切るのは鳥倉山の尾根 2024.8.21)
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左=烏帽子岳  右=富士山(烏帽子岳頂上から)
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