北アルプスの南端にある乗鞍岳は雄大な規模の火山で、四ツ岳・大丹生岳・恵比寿岳・剣ヶ峰など20以上の峰が連なる火山群の総称だ。鶴ヶ池・不消(きえず)ヶ池・権現池など火口湖も多い。第二次世界大戦中に航空機エンジンの高地実験施設を建てるための道路が、戦後は県道になりやがて乗鞍スカイラインとなった。そのため、平湯峠から3,000m峰へ手軽にアプローチできる。ただ、現在は斜面の崩落でその道路が使えず、長野県側の乗鞍高原から乗鞍エコーラインでしか行くことができない。 中ノ湯温泉から沢渡(さわんど)・番所(ばんどころ)・鈴蘭を経て畳平(たたみだいら)までバスを利用する。一気に高度を上げたせいか、標高2,700mで体調不良を訴える方が出た。念のため行動は控えてもらう。肩ノ小屋から蚕玉(こだま)岳を経て剣ヶ峰へ達し、その後は肩ノ小屋に戻って東面の大雪渓を位ヶ原まで歩く予定である。山荘前からは、バスで往路を沢渡へ下山する計画。 摩利支天岳には、乗鞍コロナ観測所(閉鎖)と東大宇宙線研究所(乗鞍観測所)が建っている。畳平からは、富士見岳をトラバースする遊歩道があり多くの人が行き交う。肩ノ小屋から朝日岳へは登山道となり、浮石に注意して慎重に登る。蚕玉岳に出ると、行く手に乗鞍本宮の鳥居が見えた。 朝から雲が多く、ガスの中を登頂。ときおり大日岳や権現池が輪郭を現すだけだった。頂上小屋の鳥瞰図で北アルプスの山なみを想像しつつ肩ノ小屋に戻る。途中で3羽のライチョウと出会った。わずかに残った雪田でスキーをする人たちを右に見て肩ノ小屋口へ降り、さらに宝徳霊神(ほうとくれいじん)の石像を経て位ヶ原へ出た。 石像がある祭祀場は、乗鞍岳が一般に登拝できるよう開山した明覚法院(信州安曇郡大野川村・別当=大宝院)を祀ったもの(『乗鞍山縁起』解説=「乗鞍を開いた修行者 宝徳霊神の祭祀場」)。近くに並ぶ秀綱霊神(ひでつなれいじん)は三木秀綱(飛騨松倉城当主)。角心霊神(かくしんれいじん)は宝徳霊神の後継者という。頻繁に雲が覆うものの、最高峰の稜線を望める機会もあった(2024.8.5)。 |