ここ何年もの間に、各地でテンナンショウの仲間を見て、もう少し違いが判ればおもしろいだろうと感じてきた。単に「マムシグサ」と呼ぶのでなく「○○○マムシグサ」と認識できれば、生息する自然環境や地域性が理解できるのではないかと思ったからでもある。 いつも頼っているウェブサイト=「日本のテンナンショウ -Arisaema-」*だけでは分からないことが多いので、判断材料となる一覧を作ってみた。『日本産テンナンショウ属図鑑』(邑田 仁・大野順一・小林禧樹・東馬哲雄 北隆館 2018年)をベースに、上記のサイトに記載の項目も含めて構成した。もっとも、これだけで解明や理解を得るのは難しいが、ちょっとでも楽しめる図表になればとの思いである。 図鑑の概要を読むと、この植物の特徴や生態はとても変化に富んでいる。形態や季節性だけでなく、込み入った生存戦略や交雑種の形成など、専門家や愛好家でも見解の異なるいろいろな要素が人々を惹きつける。種の分化や遺伝的な研究は専門性が高く、私が簡単に手を出せる世界ではない。 いっぽう、この仲間のほぼ3分の1が絶滅危惧植物(環境省レッドリスト)というのも驚きだ。それだけに好事家からは注目を集めるが、消滅しないことを願うばかりである。複雑すぎて整理できない分類群として「広義のマムシグサ群」があり、葉軸が発達するものを指しているという。また、「狭義のマムシグサ」は花が葉より早く展開するらしい。この分類でさえ、姿を確認するだけの素人にはハードルが高い。 野外で出会ったときに詳しく見ることができれば、この植物への興味はより深まる。仏炎苞の色・形・斑紋・透明度などの造形美が第一の魅力で、その高いデザイン性と多様性が興味をそそる。
*「日本のテンナンショウ -Arisaema-」 (http://prototroph.web.fc2.com/article/plant/arisaema/arisaema.html) |