上信越高原国立公園の中で、長野県側の中心エリアに志賀高原が広がる。ただ明確な領域を示す地名ではなく、おおむね山ノ内町(下高井郡)の溶岩台地を表している。上信と信越の国境稜線には数多くの山が連なり、魅力に富む山域を構成する。最高峰は裏岩菅(うらいわすげ)山。多くの温泉とともに、丸池・発哺(ほっぽ)などのスキー場も点在する。 今回は、熊ノ湯・硯川(すずりかわ)をベースに計画を立てた。一日は、高原の代表的火山として知られる横手山から志賀山に向けて歩き、もう一日は笠ヶ岳にあてる。 「草津から峠まで三里、峠から渋まで四里」と記された若山牧水の碑から出発した。この渋峠から山頂の横手山神社をめざすと、一歩ごとに周囲の山々がどんどん増え始める。上越国境稜線や浅間山の山なみが大きい。横手山頂ヒュッテからスキーコースを降って草津峠に出ると、雰囲気のよい樹林になった。鉢山の火口池は見えず、なおも降ると四十八池湿原が行く手に広がる。途中でラジオの音がすると思ったら、近くにネマガリダケの筍を探す地元の人の姿があった。 池塘を縫う木道の先に志賀山が望める。もっとも新しい火山で、カルデラ湖の旧志賀湖に噴出してできたもの。志賀山神社の鳥居からまず大沼池を往復する。ときおり見られる水面は、強酸性の水だけに独特の色を見せていた。「黒姫伝説」が残る大蛇神社にも立ち寄る。 かつて、魚野川を溯行して赤石山に登り池畔で一泊したことがある。きょうは反対側から来たのでトレースが繋がった。その時は岩菅山から裏岩菅山・烏帽子岳・笠法師山を経て切明(きりあけ=秋山郷)に下山した。 鳥居に戻って急峻な斜面を登ると、裏志賀山への分岐にたどり着く。山頂には志賀山神社が祀られ、標高もわずかながら志賀山より高い。戻って鬼ノ相撲場から登り返すと、三等三角点(点名=志賀)が設置された志賀山のピークに着いた。 お釜池を見下ろしながら、南側の急な斜面を降ると平坦で広い台地に出る。やがて四十八池湿原からの道が左から合流し、歩きやすくなって渋池に着く。雨の心配はまだないので、前山から草原を回り込んでゆっくり硯川へ下山した(2024.7.2)。 |