島原半島にある雲仙岳は火山の総称で、大村湾・有明海・橘湾を見下ろす雄大な風景と周囲の温泉が特徴である。限られた時間の中で、雲仙温泉の西側にある絹笠(きぬがさ)山と中心の普賢(ふげん)岳・妙見岳・国見岳に九千部(くせんぶ)岳・吾妻岳を加えて企画した。事前の情報で、ミヤマキリシマは国見岳山頂付近が満開とわかりぜひ登ろうと決める。ただ、国見分かれと鬼人谷(きじんだに)口の間の250メートルが春から通行止になっていて、コースの変更を余儀なくされた。 雲仙温泉(新湯)に着いた日は、午後に白雲ノ池から絹笠山へ登って山域の概要を掴む。明治時代の初めは草地で羊が放牧されたようだが、樹木が成長して立派な林になっていた。原生沼(沼野植物群落)と地獄めぐりをして宿に帰る。温泉(うんぜん)神社近くには、昭和9(1934)年に日本で最初の国立公園となるよう尽力した中川安五郎氏(カステラで知られる文明堂を創設)の石碑が立っていた。 2日目は仁田(にた)峠からアザミ谷を通って鬼人谷口に達し、風穴を見ながら鳩穴分かれまでトラバースする。ときおり噴気を上げる平成新山の裾を、立岩ノ峰から普賢岳へ向かう。「霧氷沢」付近では露岩とヒカゲツツジの葉が目立つ。山頂から紅葉茶屋(分岐)に出て、往路のアザミ谷を仁田峠へ戻った。 時間がないので、仁田峠からロープウェイに乗車し、妙見神社を過ぎるとミヤマキリシマの美しい花が散見できるようになる。とくに、国見岳南側の山肌は緑とのコントラストがすばらしい。登ってきたばかりの普賢岳が目の高さにあり、1990年から5年にわたる噴火で誕生した平成新山が背後を占める。中央の岩峰が印象的だ。 仁田峠から階層(○合目)が表示された自然歩道で池ノ原園地へ下山。二合目近くには、エビネに囲まれて弘法大師像が安置してあった。古湯を経て新湯に戻る。 最終日は吹越(ふきこし)の先にある自然歩道の登山口から九千部岳へ。田代原(たしろばる)への分岐から急坂をこなすと露岩が次々と現れた。強い風で雲が押し寄せるため眺望はあまりよくない。かすかに海岸線がわかる程度だ。頂稜は岩が連続し、北面の基部の岩穴に九千部大明神が祀られていた。下部にも鎖の下がる岩場がある。 田代原トレイルセンターでコースの状況などを聞き、馬頭観音がある急な山道を吾妻岳めざして空身で登る。登頂時には少し青空が覗いて、九千部岳が目の前に横たわっていた。植林と自然林の境界付近を自然歩道は西へつづく。ちょうど断層崖に沿ってつくられた印象を受ける。一部で旧道を使ったが、鉢巻山の南面を横断して最後は「牧場の里あづま」へ登り返す。牧場の端には「万里の長城」と呼ばれる石積みが連なり、牧野に牛の姿があった(2024.5.24〜5.26)。 |