長野県佐久市と群馬県下仁田町の境界に、大きな船体を思わせる荒船山が存在感を見せる。あたかも航空母艦かタンカーのようで、どこから眺めても独特の山容は誰の目にも明らかだろう。関西からはなかなか行きにくい地域なので、上州・妙義山と一緒に登る計画を立てた。私も、佐久の御座(おぐら)山・四方原(よもっぱら)山に登って以来の山行である。 コースは荒船不動から入山し、御岳山へ寄ったのち星尾峠から経塚山西面をトラバースする。ピークの南側から最高地点の二等三角点(点名=荒船山)に登頂し、デッキを縦断して船体の最後部にあたる艫(とも)岩展望台から相沢へ下山することにした。 凹凸を繰り返す兜岩山への稜線には、各所に小祠や石像が祀られている。星尾峠から頂稜への急坂を登ることもできるが、葉を落とした樹林を楽しむため山腹を横切る。ただ、谷の両岸は崩落が著しく、注意して通過しなければならない。尾根に出てから経塚山を踏む。 雑木林で昼食ののち、冬景色のクリンソウ群生地や荒船神社奥宮に立ち寄ってから艫岩展望台へ向かう。前方に東屋が現れると、突然展望が開けた。佐久盆地の左端には蓼科山が見え、軽井沢方面の彼方に浅間山が大きい。右端は榛名山が鎮座し、眼下には曲線を描く内山峠の国道が近い。見事な景観である。黄砂の影響か、遠くは霞んでいて雪を戴く山々を望むことができない。 相沢への分岐まで戻り、急な階段を慎重に降りる。振り返ると、背後の艫岩が迫力ある姿を見せる。中ノ宮辺りから春の花が目立ち始め、日当たりのよいところではハルリンドウが花弁を一斉に広げていた。登山口の相沢では、サクラをはじめハナモモ・モクレンなどの花に囲まれ、穏やかで暖かい空気に包まれる(2024.4.19)。 |