高見山地の東部にある局ヶ(つぼねが)岳は、「南伊勢の槍ヶ岳」と称される1,000m級のピークである。白猪(しらい)山・堀坂(ほっさか)山とならぶ「伊勢三山」に数えられ、よく目立つ山容から伊勢湾を航行する船の目印にされた。一人の局が参篭したという説話や、十二単を纏った局の姿が山名の由来である。 櫛田川沿いにつづく和歌山街道の堀出(松阪市飯高=いいたか=町)から深谷川の河岸段丘を登ると、木地師の集落だった木地小屋を経て局ヶ岳神社に至る。周囲は公園として整備され、サクラやドウダンツツジが美しい。途中に専故(せんこ=名前)の足跡があり、千人力で大牛を片付けた物語などが伝わる。 林道を離れ、急峻な旧登山道に入ると春の草花が咲き始めていた。ヒトリシズカやユキワリイチゲが目を楽しませてくれる。標高600mを超えると、地形図のルートより右手の谷に沿って登り、トラバースして新登山道と合流する小峠で尾根に出た。上部は冬枯れの明るい雑木林に変わり、カタクリの葉があちこちに出ている。開花しているものもいくつかみられた。群生するイワカガミの葉を見ながら、あとひと登りで山頂に達する。 北東側に電波反射版があるものの、周辺の山々と平野部が大きく展開する(下部に展望デッキあり)。なかなかの眺めで、山座同定に時間を費やしすぎて傍の小祠を撮り忘れた。 下山は新登山道を使う。歩きやすい道で、尾根から斜面をトラバースする。下部は九十九折で高度を下げ、駐車場のある登山口に降り立った。山神と局ヶ岳神社に参拝し、木地師の祖とされる惟喬親王の碑などを見ながら堀出へ戻る(2024.4.12)。 |