北小松(志賀)からリトル比良の山稜を縦走して音羽(高島)まで歩いた。滝・湿地・古道・岩場など見どころが点在するコースは、その都度あらたな姿や表情が楽しめる。この日は冬型の気圧配置になって、たびたび雪雲に覆われた。風に乗って雪が舞い、地面には霜柱ができていた。 比良山岳センター(比良げんき村)の前から楊梅ノ滝に向かい、展望所から雄滝を眺める。涼(すずみ)峠からシシヶ谷の流れを渡ると「左 はたみち」の標石がある。緩やかな地形のオトシを、水流や湿地を見ながら寒風(かんぷう)峠へ登る。鞍部は北西風が吹き抜け、ここでウィンドブレーカーや雨具を身につけた。 滝山への稜線は明るい雑木林が広がり、この季節らしい景観が気持ちよい。風のない頂上で早めの昼食にした。いったん降って登り返したピークを左折する。最近はここが嘉嶺(かね)ヶ岳(Ca.660)とされるが、私たちが使ってきたのは西側のピーク(Ca.650)で、稜線の道が西から北へ折れるところをいう(縦走路は山頂直下を右折)。もっとも、山容全体として捉えればよいものの、標高の高い方だけに特定するのは問題である。また、地形図にある涼峠の位置も不自然で、なぜヤケ山(大石)に向かう尾根(大石道)の途中にあるのだろうか。 鵜川(うかわ)越の林道に降り、再び岩阿沙利(いわじゃり)山(地形図は「岩阿砂利山」と間違って記載)へ100メートルほど登りがつづく。山頂の仏岩に寄ってから鳥越(とりごえ)峰へ向かう。シロダモやサルトリイバラの赤い実が目立つ。眺望を期待したオウム岩では、日射しがあったり雲に覆われたり目まぐるしく状況が変わる。風に煽られないよう注意して時間を過ごした。鉢ノ木尾の分岐から東に方向が変わり、いくつもの小ピークを登り降りして岩屋に安置された観音石仏へ達する。 東側のガレからは、琵琶湖や鈴鹿の山々が青空に浮かんでいた。かつて嶽観音堂があったエリアには、倒木と石垣や石段が残るだけで、本尊の十一面観音像は麓の長谷(ちょうこく)寺に移された。『比良―研究と案内―』(角倉太郎・阿部恒夫著 山と溪谷社 1970)には御堂の写真が載っていて、昭和40年式の2.5万図にも寺の記号が認められる。 参道を降り、弁慶の切石から白坂に来ると山麓と湖北が間近だ。夕日を受けて竹生島が明るい。ガレから足場の悪い道を慎重に進み、北原の溜池で岳山を振り返る。大炊(おおい)神社から「近江高島」駅まで歩いて山行を終えた(2023.12.17)。 |