山頂に大きな五輪塔(豊国廟)がある阿弥陀ヶ峯の南側に、『京女鳥部(とりべ)の森』が設けられたのは2008年のことである。京都女子大学が阿弥陀ヶ峯国有林を活かして森林環境教育をするため、近畿中国森林管理局と「遊々の森」協定を結んで活動を行なっている。 林内を通る道は滑石(すべりいし)街道と渋谷(しぶたに)街道を結ぶ古くから使われたもので、東西の斜面を分かつ尾根(『京都一周トレイル』東山コース=標識12)から太閤坦(たいこうだいら)に向けて山道がつづく。植林のスギ・ヒノキも多いが、コシアブラやタカノツメの葉が散り敷かれた道には甘い香りが漂っていた。下部には大きなコナラ・クスノキがあり、リョウブ・アカマツ・エゴノキ・ネジキなども見ることができる。 初めに豊国廟のあったところが太閤坦で、徳川の時代に荒廃し山頂へ再建された(明治30=1897年)。入口から500段以上の石段がつづく。周辺は駐車場で見るべきものはないが、大学のキャンパスを挟んで西側に新日吉(いまひえ)神宮があって、社殿の裏に立つスダジイの巨木が枝を大きく空に広げる。元は阿弥陀ヶ峯の樹林と一体のものだったと思われ、かつての風景を想起させて気持ちが安らぐ。東山の山麓は市街地と隣接している。しかし、特筆できる環境と各所で出合え、好ましいエリアである(2023.12.13)。 |