和歌山県の有田川と日高川の分水嶺を白馬(しらま)山脈と呼び、中部に位置する白馬山(957.4m)が盟主である。だが、山稜は東へ行くほど標高が高くなり、一等三角点の置かれた城ヶ森山(点名=城ヶ森)は1,200mを超える。近くの上湯川岳から京大和歌山研究林の稜線も1,100〜1,200m前後の高度を保つ。 城ヶ森山頂に国土交通省のレーダ雨量計が設置してあり、周囲のどこからでも目標にできる山だ。かつて、和歌山城から藩主が龍神温泉へ通った山越えの道は「龍神街道」と呼ばれ、踏み固められた道は一部を除き今も健在である。加えて、小森谷源流域に「亀谷ツガ・ブナ希少個体群保護林」(国有林)があって、その片鱗も見たいと思っていた。 そこで、護摩壇(ごまだん)山から出発して稜線を西に向かい、上湯川岳・城ヶ森山に登ったあと「龍神街道」を小森の一軒家へ下る。あとは時間の都合次第だが、小森谷に残る平維盛(たいらのこれもり)関連の場所を訪ねよう。 高野龍神スカイラインの護摩壇山で大峰山脈などを眺めてから、林道白馬線の分岐まで道路を戻る。初めは林道を歩くが、稜線が近づいた地点から尾根道をたどる。途中に1,201.1mの三角点などがあり、北側を中心に近井鳥獣保護区の自然林が広がる。上湯川岳の手前でいったん林道に降り、登り返して城ヶ森山へ。一等三角点の頂上はレーダ観測所の西側にあった。 原生林を囲むように、南から東へよい道がつづく。街道だっただけに、小さなピークは巻きながらトラバースしていく。広い尾根には大きな樹木が多く、見事な樹相がつづく。地形図によると、街道は亀谷山の西面から南面を下り気味についているが、この区間は斜面の崩落で道が途絶える。そのため、尾根にルートをとった。ただ、傾斜のある下降は岩混じりで、慎重に足元と方向を確認しなければならない。日が傾いてきたので、樹林帯の平坦地で早めにツエルトを被る。 翌朝は日の出を迎えてから起床。ネットが張られた植林地の外側をゆっくり降る。最後は左手の小さな谷へ下るので、倒木を潜って小森谷の城ヶ森山登山口に出た。日高川の本流ではないものの、スケールある渓流が目を楽しませてくれる。平維盛とお万の伝説が残る白壺・赤壺の見える地点まで往復した。 出合橋で本流に合流し、左岸の林道を亀谷橋へ向かう。道端には、アザミやノギクの花が各所で見られた。右岸に渡り、青田から龍神家の菩提寺である龍蔵寺に寄り、大熊へ出て山行を終える。帰途は聖地巡礼バスで高野山に出た(2023.10.18〜10.19)。 |