野坂山地の深坂(ふかさか)越から琵琶湖に向けて、400m〜500mの山稜が海津大崎までつづいている。かつて、この稜線を縦走したこともあるが、最近の様子はまったくわからない。西側は西近江路(北国海道)が並行し、東側には塩津街道が南北を結ぶ。歴史の表舞台にはあまり登場しないものの、湖西と湖北地方を分ける山なみは重要な位置を占める。両街道をつなぐ峠道に万路(まんじ)越があるので、東山を越えて半島の先端まで歩く計画にした。 できれば、マキノ町の小荒路(こあらじ)から登りたかったが、近年は峠道が荒れているため西浅井町黒山から取り付くことにする。秋の草花を見ながら谷沿いの植林地を上部に向かうと、小祠と広葉樹が現れて峠に着いた。西面に林道があるものの、尾根を外さないよう南に進む。峯山の前後には倒木帯がいくつかあり、その都度迂回を余儀なくされる。広く緩やかな地形に変わると反射板が建っていて、「竹生島展望台」の標識があった。樹木が成長して展望は限られる。 東山北峰を経て東山(本峰)の二等三角点に達し、尾根を間違わないよう注意して海津大崎をめざす。標高400m付近の大岩が点在する辺りで南東方向へ寄り過ぎたが、南南西に修正してことなきを得た。やがて古い道が合流し、傾斜も緩やかになって大崎寺の上部にある展望ポイントへ着いた。前面と左右に湖面が広がり、突き出た岬にいることがわかる。 湖岸に降りると、比良山系から湖西の景色が水面の彼方にあり、しばし山座同定のひとときを過ごす。桜並木がつづく道路と遊歩道で海津の集落から「マキノ」駅まで歩き、北湖の空気を胸いっぱい吸った(2023.9.26)。 |