分割して歩いている奥駈けの山行で行者還岳に出かけた(大峯奥駈けB)。行程は行者還(ぎょうじゃがえり)岳から行者還トンネル西口登山道までの区間。当初の計画では大普賢岳も含めて考えていたが、和佐又山ヒュッテがなくなったのでとりあえず日帰りで行くことにする。一部の参加者は、以前に笙ノ岩屋(第六十二靡)から大普賢岳(普賢岳=第六十三靡)を経て七曜岳(第五十九靡)まで歩いており、この区間はあとに回しても差し障りがない。 主稜へできるだけ早く登れるルートとして、今回は国道309号の90番ポストから取り付く。以前から利用されてきた大川口と小坪谷から登るルートに比べ、標高差が少なく道も明瞭である。ブナ林の中にヒノキの巨樹が混じり、なかなか楽しめるコースだ。北側の作業林道が尾根へ出る地点に古いトラックが放置してあり、周辺の伐採と植林は数十年前のことだろう。そこから上部はシロヤシオの花が目につく。主稜と出合う1458m峰では、より多くの白い花に包まれた。 天川辻までの間にカレンフェルトがあり、付近ではいろいろな花が見られる。なかでも、小さな蕾をつけたクサタチバナがよく目立つ。行者還避難小屋の横から東斜面をトラバースすると、かつて行者堂があった靡に着く。山頂直下の岩壁は切り立ち、その基部をハシゴを使って尾根へ出る。折り返すように稜線へ出たあと、シャクナゲに覆われた行者還岳の頂上へ達した。 小屋まで慎重に降り、往路でチェックしていた植物を写真に収めながら1458m峰まで戻る。その後は一ノ垰(一ノ多和=第五十七靡)を経て石休宿(いしやすばのしゅく=第五十六靡)手前の西口登山道分岐まで進む。南北に延びていた主稜が東西に変わる地点から道は北面をトラバースし、1516m峰の頂上は通らない。シロヤシオの木々はますます大きく、ピンクに染まる花もあった。 山行の最後は行者還トンネル西口まで標高差400mほどを下るが、シャクナゲに覆われた急傾斜の道がつづく。下部ではヤマツツジが咲き、大きなトチノキが目に入ると国道へ降り立つ。 山名の行者還りは、熊野から辿ってきた役行者が南側の絶壁を登れずに引き返したという伝説に基づく。古い時代は、整備された現在の道より上部の岩場を攀じ登ったと思われる(2023.5.27)。 |