山城(京都府)・河内(大阪府)・大和(奈良県)が接する三国境は、高船(京田辺市)・穂谷(枚方市)・高山(生駒市)をつなぐ三国峠で結ばれていた。天王(京田辺市)にある朱智(しゅち)神社には摂州(大坂)から奉納された大きな燈籠(宝暦5=1755年)が立ち、山中の道標からも古くよりつづく地域の結びつきと経済圏が垣間みえる。 国土地理院発行の2万5千分の1地形図に載っている府県境の交点が実は間違っていて、本当は南東へ150mほど離れた標高302m地点付近であると以前に地元(高船)が指摘しており、その状況を確認したいとも思っていた。 京田辺市の最高峰である千鉾(せんぼこ)山と組み合わせれば、「京都再発見」の講座にふさわしい1日となりそうだ。また、この山は米相場を伝える旗振り通信で知られ、旗振山(交野)と天王山(大山崎)の中継地にあたる。 三山木(みやまき)からバスで標高200mを超す高船まで行き、鎌倉時代の石造卒塔婆がある極楽寺と石船(いわふね)神社に寄ってから千鉾山へ向かう。ハイキングコースの標識はあるが、開設から年月が経っているため竹藪に覆われたところも目につく。集落からわずかで尾根に達し、生駒山宝山寺の歓喜天を拝する山頂に着いた。周囲はすべて竹林で、かつての風景を想像するのは難しい。 すぐ北側に笠上神社があり痘瘡(天然痘)平癒を願う信仰から瘡(かさ)神社ともいう。尾根の高い位置に身代不動尊が祀られ、境内からは東面の風景がすばらしい。峠道を北上すると溜池が点在し、南側に生駒山を眺めることができた。 交野(かたの)の傍示(ぼうじ)から登ってくる道が合流する地点で、本当の三国境を探索するため竹林の支尾根に取りつく。倒木やヌタ場があって、みなさん苦戦の様子。GPSで位置を確認しながら高いエリアを周回する。異なる測量杭が隣接する地点を境界と判断した。峠道に戻って今度は地形図上の境界に寄る。こちらも杭が何本も打たれていた。 天王峯の分岐には地蔵石仏などがあって歴史を感じる。次の分岐には、穂谷から来た正面に天王宮(朱智神社)を示す石造道標が残る。付近にはウラシマソウが群生していた。裏側から神社の境内に入り、巨樹が林立する境内で時間を過ごす。慶長17(1612)年に再建された極彩色の本殿は府登録文化財で、内部には牛頭天王の神像があるという。正面の参道もよい雰囲気で、入口には巨大な燈籠が立っていた。天王の集落で奈良方面の眺望を楽しみ、墓地に残る一石多尊石仏などを見ながら水取(みずとり)へ降った(2023.4.18)。 |