和歌(わかの)浦は、紀州徳川家ゆかりの景勝地としてあまりにも有名だ。その湾に沿って、タコの姿に似た丘陵が東西に連なる。西端の雑賀(さいか)崎から章魚頭姿(たこずし)山(高津子=たかつし=山)・天神山・権現山を経て御手洗池に下山し、妹背(いもせ)山から紀勢本線の「紀三井寺」駅まで歩く計画にした。各所にサクラが植えられ、海浜から内陸部の眺望も期待してこの時期にする。 雑賀崎は漁港らしい町並みで、斜面に建ち並ぶ家屋と石段や路地の景観が人気を集めているらしい。この辺りは雑賀衆の本拠地でもある。衣美須(えびす)神社から細い道を登って灯台に行く。和歌浦湾を前に広く開けた空間が晴れやかだ。そのあと番所(ばんどこ)庭園(番所台場跡)入口から「トンガの鼻」に向かう。ここも江戸時代の台場跡のひとつで算木(さんぎ)積の石垣などが残る。 「潮騒の小径」に入って章魚頭姿山をめざすと、道幅の狭い田野切通でバイクと出合う。今も人々の生活に欠かせない道である。折り返して尾根を登れば、公園になった山頂へ着いた。再び360度のパノラマがすばらしい。気温が高いせいか、黄砂による影響か、淡路島は見えたが四国までは望むことができなかった。それでも、馴染みになった山々と和歌浦が確認できて興味深いひとときを過ごす。 天神山のピークに立ち寄り、ウバメガシの林を見ながら御手洗池へ。紀州東照宮と和歌浦天満宮へ登り返し、「青石」(緑泥片岩)で造られた階段や石垣に和歌山らしさを感じる。最後は、不老橋から海禅院の多宝塔が建つ妹背山で万葉集の名勝を実感し、玉津島神社にも立ち寄った(2023.3.28)。 |