久方ぶりで比良の霊仙(りょうぜん)山に出かけた。かつて、一帯は周辺の人々の生活を支える入会(いりあい)山で、和邇(わに)荘と龍華荘の相論の場でもあった。各所からの道が発達しており、現在もその多くが残存する。近年『比良比叡トレイル』が整備され、上龍華から直接山頂へつながるルートができた。その状況も確認したかったし、日曜日のトレッキング講座で登りたいという要望も寄せられていた。谷筋を中心にヤマヒルが生息するので、気温が高い時期を避けこの季節を選ぶ。 今は、旅行の安全祈願などで信仰を集める還来(もどろき)神社を出発して上龍華(かみりゅうげ)の集落に向かうと、ショウジョウバカマなど春の草花が咲き始めていた。民家の間から谷沿いの林道に入り、植林地を奥へ進む。古くから利用された道なのだろう、掘り込まれた山道が尾根につづく。中腹に設置された林道に出て、作業道をもう一段登ると南尾根に着いた。山仕事の道があちこち分岐し、トレイルの標識が少ないので読図は欠かせない。 直登して広葉樹が目立ってくると霊仙山の頂上に着いた。琵琶湖の湖面を前に、江濃国境稜線から鈴鹿中部の山々が勢揃いしている。なかでも、金糞岳・伊吹山・霊仙山・御池岳が大きな山容を誇る。比良北部の彼方には、雪を纏った別山・二ノ峰と能郷白山・前山が輝いていた。残念ながら、白山(御前ヶ峰)は前の山稜に隠れて見えない。 トレイルコースを権現山との鞍部であるズコノバンまで行く。ここは、アラキ峠に向かうトラバース道(「和邇越」)の分岐であり、落葉した自然林が心地よい。作業林道になった点線路を下山する。東尾根の登山道を合わせ、滝谷の湧水を汲みにくる車に注意しながら栗原までくると、再び春の草花に囲まれた。西近江路と接続する和邇(今宿)まで歩いて解散する(2023.3.19)。 |