周辺の山々から何度も名前どおりの山容を眺め、ぜひ登りたいと温めてきた烏帽子山。冬の寒さを避けて南紀の山旅を計画し段取りをしていた。当初の予定では大杭峠から山頂を経て青岸渡寺へ周回するつもりでいたが、コースの難度と時間の関係で瓶子尾根を往復するにとどめる。那智から古座までの午後の移動がネックになった。 市野々の登山口から大杭峠の道に入ると石段がつづき、険しい尾根でなく西側斜面をトラバースぎみに北へ向かう。山腹のルートなので何箇所か山ヌケの現場と出合うが、それほどコースを外さずに歩くことができた。那智川流域と高田川流域を結ぶ峠道で、踏み固められたルートは安定感がある。那智山への参詣道にもなっていた。山麓は雨だったが、標高300mあたりから積雪が現れる。 峠から稜線を北に進み、いくつものピークを登降する。雪のついた急坂があるので慎重に足を運ばなければならない。本峰に近づくと岩が目立つようになり、裾を回り込んだりロープを頼るなどルートファイディングが重要になってくる。加えて、時間とともに降雪が激しさを増す。峠から1時間30分で登頂。山頂一帯で25センチほどの雪景色になり、視界も悪いので岩場めぐりは早々に切り上げた。天気がよければ帽子岩まで行きたかった。眺望も楽しみにしていただけに残念だ。 トレースをたどって大杭峠に1時間で戻る。光ヶ峯の往復を視野に入れていたが、積雪を考えるとタイムリミットまでに帰るのはちょっと難しいか。ならば、1時間あるので市野々王子跡から補陀洛山寺を経て那智まで熊野古道を歩くことにする。2011(平成23)年の大水害の爪痕は大きく、かつて入った那智天然温泉は跡形もなくなっていた(2023.1.27)。 |