花の名山で知られるアポイ岳に、いつか行きたいと計画を温めていた。ヒダカソウなど貴重な高山植物が生育していて、どの季節を選ぶかも重要な要素である。あれこれ思案した末に、初夏から盛夏の花が咲く時期を選んだ。 標高1,000メートルに満たない低山ながら、固有種(亜種・変種を含む)が20種以上もあり、全体では80種に及ぶという。超塩基性と呼ばれる二酸化珪素(シリカ)の多い地質(橄欖岩・蛇紋岩など)は植物の生育を阻害する。加えて冷涼な気候が大きく影響し、平地や温暖な地域の植物が進出できない環境になった。そのため、氷河期に南下した北方系の植物が適応・進化する特殊な生態系がつくられたらしい。 アポイマンテマ・アポイアズマギク・エゾコウゾリナ・キンロバイ・アポイハハコ・エゾルリムラサキ・サマニオトギリなどとの出会いを期待して登り始める。霧雨に煙る薄暗いハイマツ帯で、さっそくアポイマンテマの白い花が目に入った。幸先よいスタートをきることができ、その後もあちこちで脳裏と写真に焼き付ける。 下山後は、アポイ岳ジオパークビジターセンターで花のおさらいをした。植物の棲み分けも独特でおもしろい。説明を一覧したら、季節を変えてまた出かけたくなった(2022.7.12)。 |