天川村川合から栃尾辻・狼平を経て弥山に至るコースは、50年以上前に初めて登った。季節は同じ5月で、狼平付近からは残雪を踏み抜きながら大変な思いをして登頂した。駆け出しの高校生だったから仕方ないものの、それ以降は沢登り後の下山路として利用している。 この5月は「大峯奥駈けB」として希望者を募って計画していたが、不都合な要素が重なり取りやめた。一人で出かけるなら距離と時間がかかっても問題ないため、弥山から前鬼まで歩くつもりでいる。また、コースの途中にこれまで未登のピークがあるため、すべて立ち寄ることも予定した。 川合の三叉路から天ノ川に架かる吊橋を渡って尾根に取りつく。林床には春の草花が見られ、チゴユリ・ミツバツツジ・ミヤマカタバミなどが長い行程を慰めてくれる。標高が上ると、広葉樹林にオオカメノキが白色と緑色に輝いていた。 尾根を横切る送電線が下部に2箇所あり、川迫(こうせい)川を挟んで稲村ヶ岳を中心とする山々が姿を現す。すばらしい眺めに時間を費やした。高崎横手の手前で頂仙岳(朝鮮ヶ岳)を往復する。ブナからシラビソ(シラベ)・トウヒの樹林になって、気分的にホッとした。1500メートル以上の標高差と12キロメートルある行程のうち、残りの標高差が300メートルほどになる。案内板で日裏山から明星ヶ岳に行くコースが整備されているのを知った。古道の復活だという。 狼平から獣害防護ネットをくぐって階段を登りきると、台地状になってまもなく弥山神社(天河大辨財天社奥宮)の鳥居前へ着いた。まず頂上に進み、その後は弥山小屋の東側と国見八方覗*で重なり合う山々をゆっくり眺める。見事な風景だ。前日は強風と低温で寒かったらしく、一日出発を遅らせた判断が的中した。 行者還(ぎょうじゃがえり)岳から弥山までの奥駈けは改めて実施しよう(2022.5.3)。
*:現地の標石による。地形図では国見八方睨と表記(古くは國見臺と称した)。 |