「京都再発見」の講座で南山城村の野殿(のどの)道を歩いてきた。京都側からのアプローチが不便なため、信楽(滋賀県甲賀市)の多羅尾(たらお)から牛場越で童仙房(どうせんぼう)の九番に入り、野殿へ向かうことにする。 峠道の雑木林はツツジの花盛りで、春らしい風景がつづく。八番への分岐から川沿いに遡ると、開けた高現状の盆地が見えてきた。中心部には福常寺があり、「京都の自然二百選」になっているヒノキの古木が聳える。東側の山裾に六所神社があって、ここにも古木があった。注連縄の張られた鳥居からの参道が、いっそう厳かな雰囲気を強める。その先の拝殿と本殿は茅葺の美しい建物(京都府登録有形文化財)で、天照大神はじめ六神が祀られる。 市杵島姫命を祀る弁天池から旧道に入り、岩が点在する急斜面を折り返して降る。崩落した箇所を慎重に進むと、六地蔵が彫られた大きな岩に出合った。室町時代の作とされ、左右に五輪塔が彫ってある。教育委員会の説明によると、左の地輪に「源阿弥」、右に「妙一」とあるらしい。地蔵にも法名が刻まれるという。41センチの像高の上に溝状の水平な直線が彫ってあるので、元は庇が設けられていたとされる。この磨崖仏がきょう一番の目的なので、たどり着けて嬉しい。 谷の下部は歩きやすい道になって道路(東海自然歩道)と合流した。あとは押原近くの国道に出て、旧国道と集落の道を使って大河原駅まで歩くだけだ。上部のカーブでは大和高原の見えるところがあり、新緑の緑と初夏の花も咲き始めていて距離が苦にならない。大河原では、珍しい石段とも出会えた(2022.4.19)。 |