丹波でも、兵庫県氷上(ひかみ)の山々にはヒカゲツツジの群生するところが多い。向(むかい)山周辺も有名で、花の時期に訪ねたいと思っていた。今では地元がアピールに熱心で、コース情報や道標がよく整備されている。 石生(いそう)駅から観音堂登山口に向かい、時計回りで周回する。尾根の下部はコバノミツバツツジが彩りを添え、四ノ山を越えてからは淡い黄色の花が目立ってきた。風の通らない日当たりのよい岩場に多く生育する。今春はまだ咲き初めといった感じで、蕾のものも多い。 向山(三等三角点)から五ノ山を経て蛙子(がえるご)展望所を過ぎると雰囲気が変わり、雑木林にタムシバの白がよく映える。かつて耐火煉瓦に使用する珪石を採掘した跡を見てから清水(きよみず)山(国土地理院の点名は「しみずやま」)に登る。天狗岩ではツツジの花を前に、柏原(かいばら)方面の風景がすぐ下に広がっていた。下山した鳳翔(ほうしょう)寺には山門の横にツガの巨樹が聳える。 高谷(たかたに)川付近は低地の平野にある「谷中分水界」で、日本一低い中央分水界である(「石生の水分かれ」)。標高は95.45mとされ、仮に今の地形のまま海水面が100m上昇すると本州は東西に分かれる。直線的な高谷川(加古川水系)上流に「水分(みわか)れ公園」があり、由良川水系(黒井川)へ水を流す樋門も見ることができた。傍に式内社のいそべ神社があり、背後の剣爾(けんじ)山には磐座がある。山麓の風景も春らしい長閑さを漂わせていた(2022.4.8)。 |