カルデラの中央にそびえる「阿蘇五岳(あそごがく)」は、最高峰の高岳をはじめ中岳・根子(ねこ)岳・烏帽子岳・杵島(きしま)岳を表す。現在は中岳第一火口の火山活動が活発で、出かけていた4月14日まで「噴火警戒レベル2」(半径1キロメートル以内の入山禁止)が出されていた〔4月15日に「噴火警戒レベル1(活火山であることに留意)」へ引き下げ〕。そのため、高岳と中岳は登ることができず、あとの三座を目的地にした。根子岳は6年前の熊本地震で天狗岩の一部が崩落し、三角点のある東峰以外は登頂が困難である。 根子岳は大戸尾根を予定していたが、時間的な理由から大戸ノ口からの前原牧場コースに変更する。放牧場の上部から急な尾根に取り付く。ルートの大半にフィックスロープがあり、切れ落ちる斜面に注意しながら登った。徐々に遠方の山々が姿を現し、九重連山や祖母山などのスカイラインがよくわかる。 午後は草千里ヶ浜に移動し、杵島岳と烏帽子岳に登る。まず遊歩道で杵島岳に向かい、阿蘇山全体の位置関係を確認した。火山活動は時代や規模が多岐にわたり、多くの火山の集合体という理解が必要だ。最大の噴火は9万年前のもので、火砕流が九州では数メートルから数十メートルの厚さで埋め尽くしたとされる。この時の噴煙は日本全土を覆い、各地で火山灰が降り積もったらしい。火山性の地形と地質を見ながら古御池(こみいけ)火口群を周回する。火口縁の尾根筋では、早くもミヤマキリシマの花が咲き始めていた。 草千里ヶ浜に戻り、次は烏帽子岳をめざす。標高差は200メートルほどだが、スケールがあるため風景が大きい。ミヤマキリシマの間を縫って山頂に達すると御竈門(おかまど)山や夜峰(よみね)山がすぐ傍にあった。南外輪山も近い。時間があるので、溶岩ドームの残丘である駒立山にも立ち寄った。 帰途に着く日は半日の余裕があり、見どころをいくつか訪ねる。まず、肥後国一の宮の阿蘇神社に参拝。楼門は復旧工事中だが、神殿などは復元されていた。式内社で北宮と称す国造(こくぞう)神社にも寄った。手野(ての)のスギ(元天然記念物)が保存してある。少し上の湧水で喉を潤す。熊本地震(前震)はちょうど6年前に発生した。二度目の地震(本震=2016.4.16)で崩落した数鹿流(すがる)崩れと落橋した阿蘇大橋跡を訪ね、エネルギーの大きさに圧倒される(2022.4.13/4.14)。 |