阿蘇山は日本で最大級のカルデラ火山である。その大きさは18キロメートル×25キロメートルにおよび、スケールを体感するため外輪山を一度歩きたいと思っていた。大観峰(だいかんぼう)など部分的には知っていたが、全体像を掴むために南外輪山の冠ヶ岳から清水(きよみず)峠を目的地として選ぶ。 現地に着く日は午後の数時間しか行動できないので、熊本空港から地蔵峠に向かい冠ヶ岳を往復する。熊本地震の際は鉄道と道路が不通になり、この峠越えが熊本方面と南阿蘇村の間を通行できる唯一の道路だったという。きっと地蔵尊の加護によるものだろう。 翌朝は再び地蔵峠に立って、南外輪山の最高峰である大矢野岳を経て駒返峠へ向かう。太郎ヶ迫の三等三角点付近は見事な樹林で、春の草花も多い。なかでも、点在するヒゴスミレが美しい。地震が岩は肩を通過するが、北側はカルデラ壁で切れ落ちている。 午後は多津山峠・天神峠と尾根を横切る峠道を確認しながら高千穂野(たかじょうや)の落葉広葉樹林帯を登下降する。カルデラの平野部がなければ台高山脈を歩いているような雰囲気だ。清水峠の手前に電波塔があり、ピークからの眺望がすばらしい。白川の対岸は中央火口丘である中岳・高岳などが連なる。時間があるので、ゆっくり周囲の景観を楽しんだ。 高森町へ向かう途中の両併(りょうへい)川に竹崎水源があり、ドライバーさんの案内でおいしい水と景観を味わう。最終日は北外輪山にある大観峰へ寄ったが、残念ながら霧雨で涅槃像に例えられる山々の姿を望むことはできなかった。空港への帰途で、気になっていた俵山峠の展望台へ寄ってカルデラの一部を確認した(2022.4.11/4.12)。 |