宮塚山に登った翌日は神津(こうづ)島へ移動し、天上(てんじょう)山に登る予定だったが、夜半から風が強く朝方も白波が立っている。船の欠航が決まり、島でもう一日過ごすことになった。 時間があるため、昨日のルートをできるだけ避けてもう一周する。港を出て西側の椿林から南ヶ山園地をめざして歩き始めた。途中には阿豆佐和気命(あずさわけのみこと)本宮や「二番神様」と呼ばれる大山小山神社(山神様)、下上(おりのぼり)神社(「三番神社」)があり、他の社寺もそれぞれ参拝する。神社の神域はどこも巨木が茂り、とても見応えがある。また、小中学校の校門前にあるクロマツも見事な大木だった。 1980(昭和55)年に港が設置されるまでは、ハシケが人の往来と島の暮らしを支えていたという。地形などの関係から港湾の掘り下げと整備が難しく、なかでも冬期は風と波の影響を受けやすい。今回はまさにそのタイミングに遭遇した。 この島の特徴は、火山島ゆえの水に恵まれない状況であろう。昔の話だが、「一升瓶に水を入れて持っていくと喜ばれる」と伝わるほどだ。だが、椿油の生産量はかつて全国の約6割、伊豆諸島の約7割を占めたという(現在は長崎県が生産量一位)。この産業が人口300人ほどの小さな村を成り立たせている。大型のサクユリを改良した品種も出荷額が大きいようだ。滞在したことで見える風景があった(2022.3.23)。 |