田辺市の北部に多くの岩肌を見せる丘陵がある。礫を含む砂岩が堆積した地形で、地層が30度ほど傾斜してヒキガエルに似た形状から蟇(ひき)岩群と呼ばれる。和歌山県の天然記念物になっているので、時間があるときに行こうと思っていた。 右会津川が流れる矢矧(やはぎ)から岩口池に向かい、動鳴気(どめき)渓を経て南側から山に入る。荒光(あらひか)川を遡って尾根に出ると、すっきりした岩場が周囲に広がっていた。展望のよいピークに登り景観を楽しむ。見下ろすと白い梅の花が斜面や山麓を包み、春らしい長閑な空気が流れている。風が強いので注意しながら岩尾根を進む。 西側の稲成(いなり)川へ降り、蟇(蟾蜍)岩を見上げて岩屋山観音寺をめざす。まさにカエルが空を見上げるような形である。参道を登ると、御堂の手前から「新西国三十三霊場めぐり」の道が分かれ、那智山の石仏が近くに置かれていた。順番どおりに進むと第十三番の石山寺が現れ、芳養(はや)方面の山里が近い。127.5mの三角点を踏んで岩稜の先(第二十四番中山寺)から折り返すと、今度は岩窟の中に石仏が安置してある。番外の寺院もいくつかあって、なかなかおもしろいミニ巡礼道だった(一周約40分)。石窟を利用した本堂は特異で、この付近だけ見ると石窟寺院の面影が漂う。 南方曼荼羅の風景地のひとつ、伊作田(いさいだ)稲荷神社に立ち寄り、南方熊楠(みなかたくまぐす)の墓がある高山寺の西麓を通って市街へ戻った(2022.2.27)。 |