英彦山の鬼杉から町道大南線に降り、汐井川の支流を横断しながら草木ヶタオ(障子ヶ岳と岳滅鬼山U峰の鞍部)へ向かう林道を登る。岳滅鬼(がくめき)峠は、井出孫六(いでまごろく=小説家・ルポライター)の随筆『日本百名峠』に取り上げられた峠で、変わった名称だけに行ってみたいと思っていた。古くから日田方面より英彦山へ向かう主要ルートで、峠道にある法華窟がその名残を伝える。広瀬淡窓(ひろせたんそう=江戸時代の文人)も参拝のためにこの峠を越え、日記を残している(「叡土滅鬼の難所ごえ」文化七=1810年)。 峠への谷は水害で荒れており、左岸の尾根へ取り付いてから安定した道になった。峠の両サイドに「從是北豊前國小倉領」の標石が立ち、地面に埋もれてもう一つあることを帰ってから知る。日田側は古い道らしく、折り返しながら法華窟につづいていた。岳滅鬼山への稜線はアップダウンが激しい。ところどころに梯子とロープがかかり慎重に進む。「岳滅鬼嶽」と呼ばれるV峰が最高峰で、4番目に三等三角点の岳滅鬼山が並ぶ。福岡・大分の県境稜線はなお西に向かい、釈迦ヶ岳・大日ヶ岳などが連なっている。 下山の途中に玉屋神社の参道入口があり、「大山祇神社」の神額がかかる鳥居が建っていた。英彦山大権現(湯の谷別院)の境内に寄りながら、汐井川(下流は彦山川)に沿って鍛冶屋まで歩く(2021.12.16)。 |