10月中旬の日光につづき、山と温泉を楽しむ山旅で日光国立公園にある那須の山々へ出かけた。「那須五岳」のうち、今回は茶臼岳・朝日岳・南月山へ登る計画である。温泉は、大丸(おおまる)・三斗小屋(さんどごや)・那須湯本と泉質の異なるところを選んだ。 紅葉の美しい大丸温泉を出発し、ロープウェイの山麓駅まで歩く。大丸塚では享保19(1734)年に建立された宝篋印塔が残る。願主は福島の人々で、信仰と湯治の盛んだったことが見て取れる。 山頂駅を出ると火山特有の荒涼とした風景に変わり、主峰の茶臼岳めざしてザクザクの道を登る。眺望がよくなり、四等三角点を経て山頂の祠に達した。お鉢を回ってから峰ノ茶屋跡に下り、次は剣ヶ峰をトラバースして朝日岳への岩尾根に取り付く。ピークは主稜を外れるので肩の分岐から往復した。熊見曽根(くまみぞね)の分岐でも、1900m峰へ景色を見に行く。曽根は細い尾根のこと。隠居倉へ近づくにつれ、迫力ある朝日岳の西面が荒々しい。 噴煙が立ち昇る源泉を見て三斗小屋温泉に降り立った。上部に建つ神社は見事な彫刻が施された社殿で、日光東照宮の造営に携わった彫刻師の手によるものらしい。温泉は康治元(1142)年に発見され、会津中街道が通ることから近世・近代はたいへん賑わったという。前回は煙草屋旅館に泊まったので、今回は大黒屋(築後150年以上の建物)にした。往時は五軒の旅館があった。 かつて硫黄を運んだ道を峰ノ茶屋跡へ登り返す。茶臼岳西側の無間地獄から牛ヶ首へトラバースすると、姥ヶ平から吹き上げる風が強く冷たい。これまで歩いたルートとピークが見えて位置関係がよくわかった。日ノ出平からなだらかな尾根を南月山(みなみがっさん)へ向かう。山頂の祠では、背後の灌木が大きくなって茶臼岳は望めない。那須岳(茶臼岳)を、古くは月山と称していたらしく、その南に位置するのが山名の由来のようだ。 牛ヶ首に戻り、高雄への登山道を降る。標高1480m付近に飯盛温泉(膳棚ノ湯)跡があって、石垣などが残っていた。説明板によると、大正時代から戦前まで営業していたとのこと。その下流では硫黄の臭いを感じた。導管が設置された尾根道は歩きやすく、かつて硫黄を採掘した殺生石に寄ってから湯本の温泉(ゆぜん)神社へ下山する(2021.11.1〜11.2)。 |