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西国三十三所観音巡礼の仕事で知って以来、行きたかった中辺路の高原(たかはら)への思いが叶った。先日は潮見峠を越えて、いっそうその気持ちが強まった。調べると、日帰りできることがわかって天気のよい日を選ぶ。 交通の関係で中辺路町近露(ちかつゆ)から出発する。近露王子に寄ってから箸折峠に登り、傍にある牛馬童子像を見て逢阪(逢坂)峠を越える。手前には大坂本王子があり、反対側に神秘的な三体月伝説を解説する説明板があった。しばらく自然林がつづき、枯れ色の斜面にピンクのツツジが彩りを添える。春らしい光景だが、風が強くてゆっくりできない。上多和(うわだわ)茶屋跡を経て悪四郎山をトラバースすると十丈王子に着く。その「十丈の悪四郎」は怪力を持つ伝説上の人物だ。 中世には記録がないという大門王子社を過ぎると、高原池を左に見て高原の集落に着いた。標高300mを超える尾根からは、北側の視界が開ける。ながらく想い描いてきた、この風景を見たくて来たのである。北東方向には、果無山脈ののびやかな稜線が望まれる。室町時代に勧請されたという高原熊野神社に参拝し、堂ノ庭(鳥ヶ峠)へ下ったのち、飯盛山に登り返す。三等三角点からは潮見峠方面が近い。さらに高い剣ノ山経塚を越えると、一気に下る坂道。藤原秀衡(ふじわらのひでひら)の伝説が残る乳岩を回り込み、胎内くぐりをして滝尻王子社へ降り立った(2021.3.26)。 |
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