|
|
京都府・滋賀県・三重県の境界にある三国塚。三国は山城・近江・伊賀を表す。コウモリ岩は、その東に位置する三等三角点の山で点名でもある。京都府の南山城村から登ろうと計画していたが、観光パンフレットに紹介されているコースが通行困難だとわかった。そのため予定を変更し、滋賀県甲賀市信楽町多羅尾(たらお)からアプローチすることにする。幸い多羅尾上出までバスがあり、三国越の林道で島ヶ原へ下ればちょうど一日のコースとして充実した内容になりそうだ。 林道多羅尾線で三国越との三叉路まで来ると、三国塚はすぐそばにある。まず、南側の動(ゆるぎ)岩をめざして尾根を降る。確認して引き返し、林道からすぐの展望台に向かう。晴れてはいるものの、雲が多くなって全体が白っぽい空になってきた。しかも、休憩する東屋の前の木々が成長して絶景というほどではない。台高や大峰など、標高の高い山々はすべて隠れていた。最高地点は、三国塚の山頂を通り越した先の628m標高点で京都・滋賀の府県境にあたる。 昼食後にコウモリ岩へ向かう。内田嘉弘さんの著書を読むと、多羅尾側では山名を確認できないと記されている。「岩」が付くので、木津川流域の名称ではないかと考えられる。そこで、山頂周辺を探索してみた。しばらく降ると大岩が現れ、岩の間をくぐって周囲の様子を確認する。刀で断ち割ったような岩の先端からは、南側の展望が開ける。下部は傾斜が強まり、全体の高さは20mを超えるのではないか。小谷を挟んだ東側にも岩があり、こちらは簡単に上部の岩の上に立てる。全般に笠置山の景観とよく似ている。横から慎重に下の岩を回りこんで林道へ降りた。ちょうど「三国塚林道見晴台登山口」の標石がある地点だった。近くの「はさみ岩」には立ち寄ったが、ルートから外れた「梨割岩」とコウモリ岩山頂の東側にある「見晴台」は割愛せざるを得なかった。 大谷川にかかる橋まで林道を歩き、そこから右岸の道路で島ヶ原駅へ下山する。途中の見どころも多いので、時間を見計らいながら進む。川上地蔵の十三重石塔をはじめ、東大寺との関わりが深い正月堂(観菩提寺)や天台真盛宗の西念寺に立ち寄る。小さな峠を越える手前に、薬師沢の六地蔵磨崖仏と薬師堂の磨崖仏があった。宿場の雰囲気を味わいたく、駅から下の伊賀街道(大和街道)まで往復する。 気になったので、帰宅してからインターネットで検索してみた。岩そのものを取り上げた記録はほとんどなかったが、京都のある山岳会の山行記録では写真とともに掲載されている。さすが、歴史ある老舗クラブだ。蝙蝠が棲みそうな洞窟が写っている。残念ながら、私たちが訪れたのはコウモリ岩ではなかった。あらためて訪ねてみたい(2021.1.26)。 |
|
左=正月堂(観菩提寺) 右=西念寺にある三重県最大のカヤノキ(樹高=20m、周囲=6m、樹齢=約500年) |
|
|
左=永禄七年の紀年銘がある阿弥陀石仏(西念寺) 右=薬師堂の磨崖仏(南北朝時代) |
|
|
島ヶ原本陣跡付近の街道 |
|
|