茶どころ宇治は観光地としてもよく知られている。世界遺産の平等院・宇治上神社や興聖寺などには多くの人が訪れるものの、それらから外れたエリアは静かなところが多い。「京都再発見」の講座で、宇治川左岸の紅葉谷から白川付近を歩いてみた。 駅から平等院の表参道を門前に向かい、宇治川の畔に出ると紅葉はまだ十分楽しめる。観光センターに寄ってから宇治十帖ゆかりの「宿木之古蹟」碑や「蛍合戦」の蛍塚を経て紅葉谷に入った。とたんに山深い雰囲気で、カエデやシイ・カシ類の木々に包まれる。多くは落葉して落ち葉を踏んで上流に進むが、なかには鮮やかな葉を残しているものもあった。白山神社近くにはクスノキの巨樹もあり、対岸の一段上には四条宮寛子(かんし=藤原頼通の娘)の供養塔である九重の石塔が見られる。 かつてあった白川金色院の鎮守社である白山神社には、鎌倉時代の様式を伝える住宅風の拝殿があって境内の森もすばらしい。惣門を見てから集落内の地蔵院にも足を運んだ。金色院の遺仏や経典を所蔵し、平安末〜江戸時代の大般若経(563巻)などが宝庫で保管されていたという。集落の落ち着いた佇まいも好ましい。代々つづく民家の方が出てこられ、白川娑婆(じゃば)山の歴史についていろいろ話しを聞かせてもらった。こういうひとときがたいへん嬉しい。 峠を越えて折居台の住宅地に入り、昼食のため公園で西側の眺望を楽しむ。そのあと、下居(おりい)神社・山本宣治(「山宣独り孤塁を守る……」で知られる衆議院議員)が眠る山本家の墓・縣(あがた)神社などを訪ねながら宇治橋へ戻った。途中の山手には茶畑も広がっている。寒い一日だったが、温かさが心に残る帰り道になった(2020.12.15)。 |