天気が悪く、何度も中止した大峰山脈前衛の扇形山へやっと行くことができた。交通の不便なエリアだけに、登山口の黒滝村川戸までタクシーを利用する。河分神社の社前から歩き出し、片透(かたすき)方面へ折り返す。中腹の廃屋から植林地をトラバースし、川を渡ると自然林が現れる。途中の湿っぽい場所では、アケボノソウが可憐な花をたくさん付けていた。登りきった地点は849m標高点で、これからめざすピークや小南峠付近の地形がよく見える。緩急をつけながら尾根を登りきると二等三角点の頂上だった。 小南峠へ向かうため「弘法の道」(トレイル)に入ると、すぐに送電線の鉄塔が建つ。和泉山脈から大峰山脈主稜の四寸岩山まで、北面が大きく開ける。残念ながら天川村方面は樹木に塞がれ、枝の間から稲村ヶ岳と大日山のピークをなんとか確認できるだけだ。松葉山への分岐ピークは今日の最高峰。左折して小南峠隧道へ向けて急坂を慎重に下る。 大峯山へ通じる小南峠(1,080m)はもう一つ先の鞍部だが、時間がないので割愛した。県道を下ると、茶屋跡や大峯詣の人々が建立した道標・「金熊さん」などが次々と現れ、かつての賑わいが偲ばれる。川戸は川渡を表し、聖俗境界の地だという。村人から山の様子を聞かれたりしながら、銘木を扱う会社が並ぶ脇川に沿ってバスが通る道の駅まで歩いた。木々の色も少し色づき、秋らしい冷たい空気に包まれる一日を満喫した(2020.10.16)。 |