奥羽山脈の一部である神室(かむろ)山地は、秋田・山形・宮城県にまたがり、主峰の神室山や虎毛山などがよく知られている。その中にあって、禿(かむろ)岳は鬼首(おにこうべ)を代表する峻峰だ。小鏑(こかぶら)山とも称し、北側には大鏑山が連なる。鬼首カルデラを取り囲む外輪山の最高峰である。神室と区別するため「はげかむろ」と呼ばれることも多い。 鳴子温泉を経て宮城・山形県境の花立(はなだて)峠まで送ってもらうと、登山口にツアー登山のバスが待機していた。やはり、登山者にとって魅力ある山なのだ。ブナ林の黄葉を見ながら稜線を北に進む。急登をこなすと六合目で、強くなった東風を受けながら山頂をめざす。傾斜がなくなり草地が広がると不動明王が祀られていた。ほどなく頂上に達する。昨日と同じようにガスに閉ざされ、周囲を見渡すことはまったくできない。栗駒山・鳥海山・月山などを観望したかった。 下山は新中峰コースを使い、標高差700mを一気に下る。2008年の岩手・宮城内陸地震で旧中峰コースが使えなくなったため開かれたものだが、ブナ林はよかったものの登山道としてはイマイチだ。旧コースの復活を願う声も大きいらしい。 山麓の林道に降り立ち、農道と車道をつないで轟温泉に向かう。途中で地元の方と出会い、籠いっぱいのスギハリタケを見せてもらう。平野部に出ると、黄金色に染まる田圃の彼方に周囲の山々が姿を現しはじめた。夕暮れの光景が、地名やこの地の伝承と重なって印象的である(2020.10.11)。 |