八甲田山は大きく南北に分かれ、最高峰の大岳をはじめ櫛ヶ峰など20近いピークや溶岩円頂丘で構成される火山である。若い頃に滝ノ股川から櫛ヶ峰へ登り、貧民救済で造られたという旧車道を猿倉温泉へ。谷地(やち)温泉で一泊したのち、高田大岳から田茂萢(たもやち)岳まで縦走した。その時の印象が強烈だったので、北八甲田の山々を逆に辿ろうと計画する。 岩木山を終えて酸ヶ湯で泊まるものの、翌日も風雨が強くロープウェイは運休。そこで、歩いて登れる地獄湯ノ沢から大岳を往復することにした。登山口から歩き始めると、道は川のようになっており先行きが危ぶまれる。標高が上がると、火山性のガラガラした土壌に変わって歩きやすくなった。右岸から左岸に渡ると硫気ガスが噴出する斜面が現れ、荒涼とした景色に変わる。 仙人岱ヒュッテで一服し、八甲田清水(辰五郎清水)を経て鏡池から最後の登りにかかる。ここまでも強い風は吹きつけていたが、標高1,530mから上部はより激しくなった。加えて最後の100m(距離)は、地形の関係からか風が渦巻いて吹き倒されそうになる。あきらかにその音が違っていた。15m/s以上はあるだろう。這うように登頂する。「長居は無用」と早々に引き上げた。 下山後に近くの地獄沼へ立ち寄る。ここは爆裂火口跡に湧く温泉で、強酸性の高温だからあまり奥へ近づくことはできない。近くには、鹿内辰五郎(酸ヶ湯の山案内人)と親しかった棟方志功の揮毫による石碑と、安全を願う三十三観音石仏が安置されていた(2020.9.13、酸ヶ湯・青森空港=9.15)。 |