津軽を代表する岩木山は青森県の最高峰で、日本百名山にも数えられる。山容から「津軽富士」とも呼ばれる火山だ。「お山参詣」(向山・宵山・朔日山=旧暦8月1日)の準備が進むなか、百沢温泉から奥宮めざして岩木山神社を出発した。 スキー場を外れると緑豊かな広葉樹林で、カラスの休場や鼻コクリ・姥石などを見ながら高度を上げる。ダケカンバの樹高が、徐々に低くなるのがよくわかる。1,050mを超えると焼止ヒュッテがあり、コースは大沢に向けてトラバースを始める。 いよいよ核心部で、沢筋は岩床が連続する。ルートは明瞭だが、修験の山らしく慎重に進む必要がある。この登山道は、時代が下ると五穀豊穣の祈願や成人儀礼の要素が強くなって登拝行事に変化したらしい。したがって、連綿とつづく人々の暮らしや精神が凝縮された道ともいえよう。足元にはアザミの花が目立ち、なかでもミネアザミはここ岩木山が基準産地である。 種蒔苗代あたりから風が強くなり、鳳鳴ヒュッテでしばし休憩。耐風姿勢と風の強弱を読んで行動できないと、これより上部は危険だと判断する。希望者だけで、急登の二ノ御神坂・一ノ御神坂を登りきり、一等三角点と奥宮のある山頂に達した。ヒュッテに戻って、全員で津軽岩木スカイラインの駐車場がある八合目に向けて下山。北西面に入ったため、先ほどまでの風は嘘のように弱くなった。ただ、視界は数十メートルしかない。 津軽半島・下北半島から道南、白神山地から八甲田連峰など、360度のパノラマを期待していただけに、再び登りたいと話題になっている(2020.9.12、岩木山神社=9.11、岩木山展望所=9.15)。 |