最後は上五島の中通島へ渡り、二番目に高い信仰の山を目的とした。山王山(三王山)は比叡山と深く関わりがあり、雄嶽日枝(おだけひえ)神社は最澄が日吉山王権現を勧請したことに始まるという。唐へ渡る前に、遣唐使はこの山で安全祈願をした。三日浦など、潮待ちの時間と場所が地名として残る。 海上からもよく目立つ山容は、古くから人々の注目を集めた。弘仁五(814)年に入唐し、帰国後に再訪した最澄は山王宮を荒川(一之宮)に祀る。延暦寺東塔にある根本中堂の「不滅の法灯」が消えた場合は、この山から灯火を運ぶともいう。2019年10月15日には「開山1200年祭」が開かれ、最澄の銅像の除幕式も執り行なわれた。また、小値賀(おぢか)島の浄善寺にも同様の伝承が残る。 これまで、荒川から林道を八合目まで上がって頂上をめざしたが、新ルートが開設されて青方(あおかた)港からスムーズにアプローチできるようになった。地元のタクシー会社とやりとりする中で判明し、一部で工事中だったものの通行許可を取っていただき短時間で登山口に着く。今里から山王山(雄嶽)の東面を雌嶽との鞍部まで上り、荒川からの林道と接続したことで実現した。 登り始めると雰囲気のよい自然林が広がり、二之宮跡を経て尾根に出る。その窟からは、奉納された舶載鏡が発見されたらしい。三之宮にお参りしてから裏手の展望台に上る。さすが一等三角点、360度の大パノラマだ。今里コースは北東の尾根につづき、先ほど通った林道を横断して谷筋に降りる。国道に出合う手前で迎えの車が来てくれた。 次に展望スポットとして知られる高熨斗(たかのし)岳へ向かい、東シナ海の広がりを感じた。上五島に現存する29のカトリック教会群のうち、大曽(おおそ)教会を拝観してから青方へ戻る。世界遺産の恩恵か、ドライバーの方々の案内・説明がなかなか詳しい(2020.3.30/3.31=長崎へのフェリー)。 |