五島列島の西端に位置する嵯峨ノ島は平家の落人伝説が残り、流人の島でもあった。ここの火山性の地形と地質をぜひこの目で見たいと思い、一日時間をとって訪ねる。全域が玄武岩や凝灰岩に覆われ、とくに西海岸は火山海食崖として長崎県の天然記念物に指定されている。竹原(たけはる)や地下(じげ)の集落を除く島の大半が、西海国立公園の特別保護地域・保護地域である。 船の都合から滞在時間が約6時間30分あり、嵯峨ノ島教会から男岳・女岳を経て見どころを一周する。男岳(150m)は臼状火山(ホマーテ)、女岳(129.3m)は楯状火山(アスピーテ)と、二つの火山が噴火によって繋がった地形である*。360度の大展望と景観の構成要素が多彩で、滞在を飽きさせない。女岳では、島の人からツワブキの新芽(葉柄)を取っていかないかと盛んに誘われる。(*火山の旧分類は現在では使われないが、一般向に地形の説明ではよく利用される。) 西海岸の途中には「低潮線保全区域」が設定されていた。領海や排他的経済水域など国土の基準になる。そのため、面積に大きな影響を及ぼす行為を法律で規制している。あらためて国境の島だと実感した。島名は嵯峨(京都)とのかかわりが指摘され、無形民俗文化財の「オーモンデー」(念仏踊り)もどこかその文化を彷彿させる。 この日は、新年度で赴任する先生の出迎えとも遭遇したので、時間をみながら小中学校にも立ち寄った。そのほか、途中の小野神社・郵便局などにも寄り道する。現在の人口は約130人とのことで、子供の教育を考えて福江島に移る家庭が多いそうだ(2020.3.29)。 |