一度行ってみたいと思っていた五島列島の山へ、やっと出かける機会が訪れた。百数十ある島のうち、福江島と中通(なかどおり)島の代表的な山と自然を訪ねようとあれこれ計画を練った。現地の滞在は3日だが、往復の交通を考えると5日は必要になる。そこで、効率的かつ見どころを外すことなく回れるよう考えた。 ところが、五島福江空港直前で飛行機にトラブルが発生し、長崎港から福江港へジェットフォイルに乗る羽目となる。そのため、福江島のシンボルである鬼岳(おにだけ・おんたけ)は割愛せざるを得なくなった。この草原の山は火(ひ)ノ岳・城岳・箕岳(みのたけ)・臼岳からなる福江火山群の主峰だけに残念だ。 翌日は七ツ岳(ななつだけ・ななんたけ)登山口から三等三角点の山頂に登り、ピークをアップダウンしながら最高峰の父(てて)ヶ岳まで縦走する。途中のW峰はピラミダルで魅力的だが、雲に覆われてなかなか姿を現さない。X峰から先は傾斜も緩くなり、やがて七嶽神社と寺脇を結ぶ峠に降り立つ。標高差100メートルを登り返して西に向かうと、北斜面から稜線に林道が上がってきて伐採作業を行なっていた。倒された木が道を塞ぐ。父ヶ岳に近づくと、南面は好ましい樹林で巨樹も多い。100メートルの急坂で二等三角点のピークに立つものの、残念ながらここもガスの中だった。植林地の鞍部から南へ道があれば下山に使うつもりでいたが、状態があまり芳しくないので七嶽(ななたけ)神社の峠まで戻る。 神社上宮跡周辺は神域で原生の自然を感じる。ダイレクトに下る道でなく、巨木を巡るルートを利用した。灯籠と基壇が残る跡地からは、参道の石段が谷に向かっている。盛んだった信仰の面影が漂い、七嶽神社(下社)に参拝してから広い谷筋を荒川温泉まで歩く。各所で咲くヤマザクラが美しかった(2020.3.28)。 |