木津川市加茂町の当尾(とうの)は奈良興福寺の荘園で、尾根に寺院の塔が並んでいたため地名になったといわれている。「京都再発見」の講座でこれまで二度訪れ、有名な石仏は概ね訪ね歩いた。浄瑠璃寺・随願寺跡・岩船寺周辺が終わったので、今回は北部を中心に石造物全般をテーマにする。この地は五輪塔や町石も多く、鎌倉時代など総じて古いものが目立つ。 浄瑠璃寺門前を出発地として、まず水呑地蔵を拝顔するため南に向かう。以前に来た時は台風直後で荒れており、たどり着けなかった石仏だ。そのあと齋講(ときこう)が建立した石碑などを訪ねながら北へ進み、最後は当尾街道(「ながさか道」)の起点にあたる美浪(みなみ)へ下る計画とした。 東小(ひがしお)から大谷川に沿って下ると、西側の尾根で石室に守られた穴薬師がある。そこから北へ約1.0キロ行くと、日当たりのよい尾根に千日墓地が広がっていた。南端に六体地蔵(室町時代)や阿弥陀如来像があって、その柔和な表情が美しい。入口には鎌倉時代の十三重層塔と鳥居(明治時代)が建ち、傍には大きな双体石龕仏(室町時代)が残る。この日一番の見どころであった。 辻の磨崖仏(南北朝時代)や宝珠寺の五輪塔(鎌倉〜南北朝時代)に寄ってから金蔵院へ向かうと、しだれ桜の花がちらほら咲き始めている。境内にあるサンシュユの黄色も鮮やかだ。途中で出会ったアブラチャンと菜の花も春らしい景観を見せていた。 時間の余裕があるので、前回割愛した瀬谷不動尊へ寄り道する。峠を越えた先から北側の谷筋に降りると不動堂があった。光背の火焔は赤い彩色が残り見事である。北下手から長坂川に沿う旧道を進むと、美浪までなかなか好ましい雰囲気に包まれていた(2020.3.17)。 |