「京都一周トレイルを歩く講座をやってもらえないか」と依頼があったのは10年前の春である。仕事や家庭のことなど、時間的に何とかなりそうなので引き受けることにした。それまでは自分の登山・活動が中心で、何らかの形で登山やトレッキングを安全に楽しむ方法などを一般に広めたいとも思っていた。例えばツアー登山のガイドやリーダーで出かけると、参加者のレベルにバラツキがあるのも大いに気になる。ちょうど「百名山」ブームの最中だった。 初めの半年はトレイルコースを8回で歩き終え、魅力ある山やエリアへもっと行きたいという希望に応えて次の年は講座を増やすことになった。その結果が一覧のとおりである。当初からの受講者も多く、今では受講者同士や山岳会など組織に入って行動する人も多い。講座がそのキッカケになったのなら、役割は果たせたと言えるのではないだろうか。 当初、10年あれば関西の主な山々に足跡を残せると感じていたが、マニアックなピークや技術レベルの高い山と谷、積雪期を除いて概ね実現できたと感じている。アプローチは公共交通機関を利用するため、車でしか行けない山域と深山はもとより対象外である。それらは各自の行動力や計画に委ねるほかない。 知識と技術があっても、人に教えることは別の話である。これまで受講者に育ててもらい感謝するばかりだ。今までの蓄積の上に、今後も喜んでいただける山行への模索はつづく。また、若い世代や新たな受講者への対応も重要な課題である。時代の空気が変わった点も踏まえ、11年目は既に始まっている。 |