和泉山脈の最高峰である南葛城山(「嵯峨谷ノ峰」)は不遇な山だ。「ダイヤモンドトレール」からアプローチするにしても、分岐から距離があってなかなか行きづらい位置にある。そこで高野口町(和歌山県)側から登り、紀見峠へ出るよう計画した。これなら、京都から出かけても5時間程度の行動で日帰りできる。 この山行で初めての白い花と出会った。名前はサツマイナモリ。関東地方から沖縄にかけて、太平洋側に分布するアカネ科の植物で、薩摩のイナモリソウという意味だろうか。命名は稲森山(三重県)で見つかったことによるとされるが、その山の所在が判然としない。鈴鹿の三滝川流域にある稲森谷に当てはめる説が有力である。それにしても、谷筋を一面に埋める景観はなかなか美しい。 コースの見どころは他にもあり、高野口町九重(くじゅう)から紀ノ川を挟んで広がる展望がすばらしかった。高野三山や慈尊院から始まる町石道の尾根を望むことができる。また、葛城修験の宿(経塚)も歴史を感じさせた。一本杉にある第十四経塚(鏡ノ宿)は、江戸時代までは光滝(光瀧=こうたき)寺にあったとされ、時代とともに変化したと考えられる。御所台ノ森では、祠に葛城入峯の碑伝(ひで)が納められていた。現在、修験の道はどのようにつづいているのだろう。植物とともに興味を起こさせるルートだった(2019.4.27)。 |